栃木市の北関東自動車道でタクシーに乗車中、意識を失った運転手に代わり運転操作を行い、重大交通事故を防いだとして、県警高速隊は4日、乗客だった群馬県伊勢崎市、道路標識整備会社社長宇都木正之(うつぎまさゆき)さん(52)と次男の会社員仁也(じんや)さん(19)に感謝状を贈った。親子の冷静で勇気ある対応が社員旅行で大阪・関西万博に向かっていた乗客9人の命を救った。
2人は5月15日早朝、同僚7人と同県から東京都内へ向かうワゴンタイプのタクシーに乗っていた。北関東道東行きから東北自動車道上り線につながる片側1車線の岩舟ジャンクション入り口で異変は起きた。
徐々に道路右へ寄るタクシー。運転席後ろの席にいた正之さんが「危ない」と叫んだが、そのままガードレールに衝突した。車内は突然の衝撃に静まり返ったが、車は走り続けた。
正之さんは運転席の60代男性が脱力し、横に倒れかかっているのに気付いた。運転席の背もたれの上から必死に手を伸ばしハンドルをつかんだ。「助けてくれ」。声を張り上げると、隣にいた仁也さんが前列に移動して席の下にもぐり込み、ブレーキペダルを手で押した。
タクシーは左右のガードレールに計3度衝突し、約400メートル進んで停車。正之さんらは救急隊到着まで運転手を心臓マッサージしたが、運転手は搬送先で病死が確認された。
同隊で大場清光(おおばきよみつ)隊長から感謝状を受け取った正之さんは運転手の冥福を祈り「二次被害が起きず、従業員に大きなけががなく良かった」、仁也さんは「死ぬかもしれないと思った。父がハンドルを握ってくれたのでブレーキ操作できた」と振り返った。