完全に新しいチームを作った場合、申請の期限は毎年七月一日。今年の期限はもう過ぎてしまっているため、仮に来年申請しても承認されるのは二年後の春だ。そして条件が整えばその年の秋からのリーグ戦に参加できるのだ。つまり最短で二年後の秋からB3リーグに出場できるわけだった。しかも現在、二年後のリーグの大改革を控えているため、B3リーグの入会受付を一時的に停止しているという話だった。状況は厳しかった。
いったん諦めかけた奨吾(しょうご)だったが、Bリーグから出されたプレスリリースの中に、『現在Bクラブのない6県を活動地域とするクラブについては入会に向けた諸条件の整備を支援し、例外的に入会申請を受け付ける』という一文を発見した。そこに一縷(いちる)の望みを抱いた。
奨吾が目をつけたのが高知クロシオンズの存在だ。最近、B3リーグ入りを諦めたという高知市内のチーム。このチームを丸ごと譲り受けることができれば、最短でB3リーグ参入を果たせるかもしれない。そう思って代表の菊池(きくち)に連絡したところ、こうして会ってもらえることになったのだ。
「最初に確認したいのですが」奨吾は店員が運んできたアイスコーヒーを一口飲んで言った。「高知クロシオンズの記事、読みました。活動を再開する目途(めど)はあるんですか?」
「ありませんね、今のところ。元々僕らは社会人バスケチームでした。バスケ好きの仲間が集まって、休日に汗を流す。その程度の集まりやったんです。でも……」
二年ほど前のこと。あるメンバーがチームの飲み会に一人の男を連れてきた。それがコネクトエネルギーの社長だった。四国で太陽光エネルギー事業を進める経営者で、本人は東京都民だった。かなりのバスケファンらしく、メンバーたちと意気投合した。そして社長はこう言った。みんなでBリーグを目指さないか。金のことなら心配要らない。私にすべて任せてほしい。