気軽に読めて、ポジティブになれる話題を届けよう-。そう言われ、取材対象としてまず浮かんだのが、足利市内にある「ピンクの家」だった。

記者として駆け出したばかりの9年前、足利総局に配属された。着任してからずっと気になっていたのがピンクの家だった。
チャンス到来とばかりに今夏、住人を取材した。住宅の外壁も、玄関前に止まっている車も、着ている服もピンク色。何者なのか、なぜピンクなのか。答えを、下野新聞デジタル限定の記事として公開した。
見た目のインパクトに身構えそうになったが、実際の住人は、フレンドリーなおしどり夫婦だった。「俺たち、ちょっと変わってるのよ」。取材中、冗談やダジャレを交えながら軽快なやりとりは続き、気付けば2時間以上も話し込んでいた。
新聞で取り上げられるのは大活躍した人または不祥事などを起こした人だけ、というイメージを抱く人もいるだろう。でも、誰の人生にだって、それぞれのドラマがある。例えささやかだとしても、そこにスポットを当てたいと思った。
家をピンク色にした経緯や夫婦の人柄を紹介した記事は、期待した以上に閲覧数は多く、読者からも「面白かった」「斬新だった」との感想が寄せられた。ショッキングな報道が少なくない今、肩の力が抜けるような、等身大のニュースを届けられただろうか。
掲載から1週間後、夫婦から1枚のはがきが届いた。
「あたたかでハッピーな記事、ありがとうございます。笑顔でいっぱいの世の中、共に作っていきましょう」。
達筆な文字でつづられた言葉に、うなずかずにはいられなかった。
「超目立つ」足利にあるピンクの家 車も服も…なぜ? ユニークな住人を訪ねた(10月9日公開)
史跡足利学校や国宝鑁阿(ばんな)寺など、歴史を感じさせてくれる街並みが広がる足利市。中心部の一角に、ピンク色の外壁が目を引く家がある。消防署や郵便局がある通りなので、見たことがあるという市民も多いのではないだろうか。かつて足利を担当していた記者が、ずっと気になっていた住人を訪ねた。

ピンクの家があるのは、
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