JR東日本が整備を進める新路線「羽田空港アクセス線」について、東武日光線沿線の栃木、鹿沼、日光市の自治体や商工関係者が「東京都心・羽田空港直通電車推進期成同盟会」を設立した。直通電車が開通すれば利便性が向上し、観光誘客など沿線地域の活性化が期待される。周辺住民も巻き込み、関係各所への要望活動などを展開したい。

 同アクセス線はJR東日本が2031年度の開業を目指している。インバウンド(訪日客)需要の拡大をはじめ、首都空港として重要性が高まっている羽田空港の機能強化などが狙いだ。東京駅と羽田空港を約18分で結ぶ予定で、東京・新木場方面の「臨海部ルート」、新宿方面の「西山手ルート」、宇都宮線、高崎線から東京駅や羽田空港へ向かう「東山手ルート」を整備する方針を示している。

 同盟会は沿線自治体と経済界が一体となり、県西地域の交通利便性の向上や地域振興につなげようと設立した。

 東武日光線沿線にある栃木、鹿沼、日光3市の人口は計約32万人。通勤通学、行楽など沿線住民の身近な足として利用されているが、東武日光線を利用して羽田空港へ移動するには県内や埼玉県、都内でJR線や地下鉄などへ乗り換える必要がある。

 東武日光線では06年3月からJRとの相互乗り入れが始まり、現在もJR新宿駅と東武日光駅、鬼怒川温泉駅間で直通特急が運行されている。アクセス線もその延長上と考えれば実現の可能性はある。沿線住民をはじめとした県民ニーズを十分に把握した上で、官民が協調して要望活動などを展開したい。

 直通運転が実現すれば、羽田空港を起点に国内外の幅広いエリアの観光客を直接県内へ呼び込むこともできるようになる。東武日光線沿線には世界遺産の社寺や国立公園、温泉、レジャー施設などが多く、新型コロナウイルスの5類移行に伴い観光客は回復している。地域の魅力を存分にPRすることで新規需要を喚起することもできるはずだ。

 同盟会は今後、鉄道両社や関係官公庁などへの要望活動をはじめ、機運醸成や啓発活動に取り組むことを確認している。沿線住民の中にはまだアクセス線の整備そのものを知らない人もいる。利便性だけではなく、直通電車の開通がもたらす効果も共有し、住民とともに歩みを進めたい。