2025年3月9〜14日に開催される「にっぽん丸で行く 春の小笠原クルーズ」(下野新聞社、日立ポートサービス企画主催)。5泊6日の旅を共にする大型客船「にっぽん丸」の魅力を体験しようと、本紙記者は10月12〜15日、横浜港から神戸港へ向かう「行ってクルーズ」に参加した。船上で堪能した美食、娯楽、そして絶景。非日常のクルーズライフの魅力を伝える。

豪華客船クルーズと聞いて記者が最初に思い浮かべたのは映画「タイタニック」。着飾ったセレブな人たちが豪華な船内を悠々と歩く光景が浮かび、自分は場違いなのではないかと考えてしまった。また、記者は乗り物酔いをしやすいので、事前に酔い止め薬を何箱も買って備えたが、ちゃんと船旅を楽しめるだろうか、という一抹の不安を抱えながら横浜港へ向かった。

「新港ふ頭客船ターミナル」を抜けて目にした全長約166メートルの船体は想像以上の大きさで、海上に建つ巨大な建造物のような全容に圧倒された。タラップから船内に乗り込むと、クルーたちが笑顔で出迎えてくれた。その中の一人、商船三井クルーズの福元剛(ふくもとつよし)ゼネラルマネージャー(60)に「乗り物酔いしやすいですけど大丈夫でしょうか」と聞くと「そんな暇もないくらい、すてきな時間を過ごせると思いますよ」と笑った。

メインエントランスに足を踏み入れると、きらびやかなシャンデリアが目を引いた。「豪華客船に来たって感じがする」と、写真撮影を楽しむ乗客の姿も見られた。乗客も豪華客船の旅を心待ちにしていた一般の人たちで、少しほっとした。
記者が宿泊した客室は、船内で最も客室数の多い「スーペリアツイン」。部屋にはアメニティーやミネラルウオーターのほか、スパークリングワインも用意され、ベッドのすぐそばにある窓から外の景色を望める部屋を見て、高揚感を覚えた。

約600人の乗員乗客を乗せた船は、12日午後7時に横浜港を出発すると、早速夕食の時間に。メインダイニング「瑞穂」の夕食は和洋食の日替わり制で、初日は「蓮根(れんこん)と帆立のはさみ揚げ」をメインにした和食メニュー。「美食の船」と呼ばれているだけあり、味もさることながら見た目も美しい料理ばかりが並ぶ。朝昼夕食以外にもアフタヌーンティーや軽食などの食事も充実しており、思い返せば、4日間のクルーズで空腹を感じた時間なんてなかった。
翌13日は終日航海日。船上からの絶景を望むため午前5時に起床した。デッキに出ると、まだ夜明け前にもかかわらず、数人の乗客の姿が見えた。白み始める空に目を向け、日の出を今か今かと待ち構える。午前6時ごろ、ゆっくりと姿を見せた御来光は神秘的で、多くの乗客がその光景に目を奪われていた。夕方には、水平線に沈んでいく夕日も観賞。兵庫県宝塚市中山五月台4丁目、自営業村上一郎(むらかみいちろう)さん(69)は「初めて乗船したが、船の上から見る朝日と夕日は格別ですね」とご満悦だった。

またこの日は、アルゼンチンタンゴ四重奏団「Viento Sur Cuarteto」や落語家の春風亭昇々(しゅんぷうていしょうしょう)さんによるステージショーをはじめ、クルーズ恒例のビンゴゲームやカクテルパーティーなどイベントがひっきりなしに開催された。ビンゴゲームでは、前座としてクルーたちが南京玉すだれを披露。「さてさてさてさて」と口上を口ずさみながら、すだれをさまざまな形に変えていくクルーたちに乗客から拍手が送られ、会場は大いに盛り上がった。

絶景やイベントを楽しんだ後の夕食は昨晩と打って変わった洋食メニューで「にっぽん丸特製ローストビーフ」を堪能。ナイトシアターで映画観賞もして盛りだくさんの一日を終えた。

14日は、和歌山県の日高港に寄港し、船を出て観光を楽しんだり、船内に残ってくつろいだりする人の姿も見られた。記者は、船内をもっと満喫したいと船にとどまった。7階の「リドテラス」では併設されている温水プールで泳ぐ人の姿も見られ、南国情緒を味わいながら軽食のホットドッグとGODIVAのチョコレートドリンク「ショコリキサー」を楽しんでいた。透き通るような日高港の海を眺めていると、外の「スポーツデッキ」からにぎやかな声が聞こえてきた。様子をうかがうと輪投げ大会が開かれており、取材をしていると乗客の女性に「お姉さんもやろうよ!」と手を引かれて参加することになった。当初は1回だけ挑戦するつもりだったが、気がつくと何度も列に並び、時間も忘れてゲームを楽しんだ。

この7階の甲板後部にある「スポーツデッキ」では毎朝、ラジオ体操などを行う「おはよう体操」も実施されており、早朝にもかかわらず多くの乗客が集まっていた。
夜は有料の「ホライズンバー」でカクテルをたしなんだほか、ゲーム券でトランプやルーレットを楽しめるカジノラウンジ「ビギナーズラック」で、ブラックジャックに挑戦し、「大人の夜」を過ごした。
最終日の15日は、朝日を眺めながらモーニングティーを飲み「瑞穂」で最後の朝食。「もうこの食事ともさよならか」と寂しくなった。食事を終えてすぐの午前9時には神戸港に到着し、4日間の優雅で楽しい船旅を終えた。
船内での生活は、老若男女が楽しめるサービスが充実。船酔いも酔い止め薬を飲んだり、外の景色を眺めたりして気にならなかった。クルーズは敷居が高いと感じる人もいるかもしれないが、この機会に航海の旅に出てみてはどうだろうか。記者は3月の小笠原クルーズに再び同行できるかは分からないが、またいつか豪華客船にっぽん丸での船旅を楽しんでみたい。
(文・写真 広瀬華)
下野新聞社にっぽん丸チャーター企画「にっぽん丸で行く 春の小笠原クルーズ」は申し込みを受け付け中
【日程】2025年3月9〜14日【行程】大洗〜父島〜大洗▽大洗港発着▽父島2日間滞在▽鳥島、孀婦岩(そうふがん)付近を航行予定【募集人員】360人。最少催行人員200人。定員になり次第締め切ります【旅行代金】大人1人(2人1室利用の場合)33万9千円〜134万9千円※詳しくはクルーズデスクへお問い合わせください【申し込み・問い合わせ】日立ポートサービスクルーズデスク0120・330525(午前10時〜午後5時、土日祝日休み)。【企画主催】下野新聞社、日立埠頭(日立ポートサービス)【旅行企画・実施】日立埠頭(同)茨城県知事登録旅行業2-628号、全国旅行業協会会員
