任期満了に伴う県知事選は31日、告示される。立候補を表明しているのは、6選を目指す無所属現職の福田富一(ふくだとみかず)氏(71)=自民、公明推薦=と、政治団体「みんなで県民の知事をつくる会」が擁立した無所属新人の針川佐久真(はりかわさくま)氏(74)=共産推薦=の2人。人口減少や少子化など困難な課題が山積し、物価高が県民の暮らしを直撃している。不安を抱えながら生活する県民に、どのような将来像を示すのか。県民が希望を持ち豊かに暮らせる未来に向けて、建設的で充実した議論を期待したい。

 5期20年という異例の長期政権を築く福田氏は、さらに4年県政のかじ取り役を目指す。6選出馬は県政史上、例がない。周囲の声を受けて出馬を決断したと言い、「今の時代には経験や人脈も必要」と説明している。経験や人脈が行政にプラスに働くという主張は一定程度理解できる。だが、福田氏は権力の座に長く居続けると腐敗するという「権腐十年」を政治信条に掲げてきただけに、出馬理由に関して一層丁寧で説得力ある説明が求められよう。

 知事選を巡っては、立憲民主党や日本維新の会が候補者擁立を断念し、一時は無投票の可能性もささやかれた。一方で、共産党県委員会などで組織する「つくる会」が候補擁立を決め、選挙戦が確実となった。県民に選択肢が示され、本県の将来を考える機会が確保されたことは歓迎すべきことだ。

 福田氏は、人口減少対策など継続性のある施策に加え、全世代対象の学び直し支援、地域貢献を目指す若者人材バンクの設置など、今日的な課題に対応した政策を公約に盛り込んでいる。針川氏も介護保険料などの負担軽減、県内で就労する若い世代への家賃補助など広範な分野の施策を網羅している。選挙戦で互いの主張を戦わせ、県民の関心を高める工夫を求めたい。

 知事選の投票率は、福田氏が初当選した2004年こそ47・65%と50%に迫ったが、その後の4回は30%台と低水準で推移している。知事選は有権者から遠い選挙とされ、投票率は上がらない傾向にある。衆院選が終わったばかりで、関心が高まらないのではと懸念する声もある。選挙は民主主義の根幹をなすものだ。候補者の主張を吟味し、自らの信念に基づき、貴重な1票を行使してほしい。