衆院選で自民、公明両党が過半数割れの大敗を喫した。有権者は連立与党にノーを突き付けた。反省の色が見られない、政治とカネの問題に対する怒りの表明であることは間違いない。本県選出議員の顔ぶれは結果的にまったく変わらなかったが、自民党候補者は軒並み得票を減らしており、全国的な潮流にはあったといえる。微妙なバランスを選択した民意に従い、政治の在り方を根本から変える機会が訪れたと言えよう。

 当面の焦点は、特別国会における首相指名選挙の行方となる。特別国会は憲法の規定で衆院選から30日以内に開く必要があり、首相指名で誰も過半数を獲得できなければ決選投票が実施される。

 石破茂(いしばしげる)首相は与党内に責任論が出ているものの、なお政権維持に意欲を示す。対して立憲民主党の野田佳彦(のだよしひこ)代表は「首相指名を取りにいくのは当然だ」と強調している。

 自民、公明合わせた獲得議席は215。過半数の233には裏金問題で非公認とした3人の追加公認や保守系無所属を加えたとしても足りない。首相の念頭には岸田政権時代に予算案に賛成したことのある国民民主党(獲得議席28)や安全保障政策が似通っている日本維新の会(同38)などとの連携があるようだ。

 両党は選挙戦で自公政権を厳しく批判してきた経緯もあり、現状は連立政権入りに否定的な態度を崩していない。他方、政策ごとの部分連合の可能性に含みを残す。国民に説明できないような行動は厳に慎んでほしい。

 国会は今後、自民裏金に端を発した政治改革にまず取り組むべきである。加えて物価高や社会保障、安全保障分野の課題が山積している。秋の外交日程もめじろ押しだ。

 与野党が国会での多数派工作に血道を上げ、政治空白を長引かせることは許されない。一方で安易な数合わせに走れば、有権者の一層の失望を招くのは必至である。

 県内では結果的に自民党候補者5人、立憲民主党2人が当選し、選挙前と勢力図に変化はなかった。

 県内比例票の政党別得票率を前回と比較すると、自民党は7・9ポイント減の30・2%と大きく退潮したことが分かる。公明党も微減した。一方、立憲民主党も24・1%で0・4ポイント減少している点に注目したい。自民への不信は大きかったが、立民も信任されたとは言い難いということだ。

 ただ、本県も含めた結果として、民意が与野党伯仲の政治状況を求めたとすれば、それにふさわしい立法府を実現することが、国民の負託に応える各党の責務であろう。

 政権運営の枠組みづくりと並行して、自民党内の動きから目が離せない。自民は公示前の256議席から60以上議席を減らし、勝敗ラインであった与党過半数を割り込んだ。求心力を失った首相の責任を問う声が収まらない。

 開票翌日に小泉進次郎選対委員長が自民敗北の責任を取って辞任した。旧安倍派を中心とする非主流派は「石破降ろし」をうかがう。首相が「党内融和より国民理解」の方針を貫けるか注目だ。

 立民は野党第1党としての重責を再認識してほしい。久しぶりに政権交代のチャンスと浮かれているだけでは、短命に終わった旧民主党政権の二の舞いになる。