消防団員のなり手不足が叫ばれて久しい。本県の団員数は4月現在1万3216人で、8年連続で過去最少を更新した。このうち基本団員と呼ばれる団員が大半で、大規模災害時のみの出動や、時間帯を限定するなど「できる範囲で活動できる」機能別団員は1割にも満たない。消防団離れが加速する現実を踏まえれば、県や市町は基本団員の参加ばかりを望むのでなく、機能別団員制度を周知し新たな団員確保を急ぐべきだ。

 消防団員は非常勤特別職の地方公務員で、本業の傍ら団員を担う場合がほとんどだ。かつては自営業の人が多数を占めていたが、現在は会社勤めなどの「被用者」が7割と圧倒的に多い。こうした中、県消防防災課によると「地域コミュニティーの希薄化や、働き方の多様化などによる複合的な要因」で団員の減少に歯止めがかかっていない。

 現状を打開する切り札になり得るのが機能別団員だ。国の提唱で2005年に全国的に始まり、その対象も拡大されてきた。被用者は居住地と勤務地が離れている場合も多く、火災などの初動対応に常に駆け付けるのが困難なことは想像に難くない。

 だが休日を活用して啓発活動などの後方支援に従事することや、大規模災害時のみ避難誘導や避難所運営に関わることならできると考えている人は少なくないだろう。機能別団員制度は、住民それぞれの消防団への関わり方のオーダーメード化とも言える。

 その一方、県内25市町のうち、同制度を設けているのは15市町と全体の6割にとどまっている。全国的には機能別団員だけで構成する「機能別消防分団」を持つ自治体もあるが、本県ではまだない。機能別団員の数も15市町合わせて981人と消防団員全体のわずか7%弱で、制度の導入から約20年たっても浸透しているとは言い難い。

 「潜在的ななり手」を掘り起こすには、同制度を設けていない10市町が新たに制度化して門戸を広げることはもちろん、全市町が機能別団員制度を積極的に周知し、住民に呼びかけることが急務だ。

 県内に甚大な被害をもたらした2019年10月の台風19号から12日で5年が経過し、災害時における消防団の重要性が改めて思い起こされる。何より県民一人一人が、地域防災へ関心を高めることが求められている。