11日夜。宇都宮市中心部にある地域コミュニティーセンター内に「おかわり!」という元気な声が響いた。親子連れなど36人が訪れた子ども食堂「ほうぷけん」での一コマだ。
ほうぷけんは大型連載企画「希望って何ですか-続・貧困の中の子ども-」取材班による支援実践の場。連載は、2014年に取り組んだ大型企画の続編として始めた。
取材を進めると、10年前に比べ子育て世帯への現金給付などは拡充し、子どもの貧困率は改善しているが、まさに貧困にある子どもの生活状況が改善されたわけではないことが分かってきた。足しげく通った「居場所」と呼ばれる支援の場では、苦境の中で我慢や諦めを重ね、意欲が湧かない多くの子どもと出会った。
10年たってもなお変わらない現状を前に、報道の仕方について改めて考えた。前回同様、提言をして締めくくるのか。それとも-。
親子が地域とつながるきっかけになり、かつ、自分たちでもできそうな支援を実践したい。その具現化が子ども食堂の運営だった。
ふたを開けると子どもが来ない日があったり、片手間ではないかと指摘を受けたりもした。連載では食堂運営の難しさをそのまま打ち明けた。こうして開催を重ねるうち、持続可能な形で子どもを支えるには地域の力が不可欠と実感した。
ある日、記事を読んだ市内在住の専門学校生野尻芽依(のじりめい)さん(21)がボランティアを買って出てくれた。食品の寄付や手伝いの申し出も相次いだ。
「いつか子ども食堂を運営したいと考えていた」という地域の人たちの思いが重なり、今月からは同市西地区の社会福祉協議会や民生委員児童委員協議会と共催している。連載が、地域の力を引き出す契機になったと自負している。
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「希望って何ですか-続・貧困の中の子ども-」
2014年の「子どもの貧困対策推進法」施行を機に展開した大型企画から10年の節目に合わせた続編。あらためて子どもの貧困の実相を見つめ、当事者である子どもや家族、支援者らの姿や思いから、子どもの貧困対策の現在地や進むべき方向性について50回を超えるルポを軸とした連載などで報道した。24年1月から半年間掲載。