呼吸器感染症の一つであるマイコプラズマ肺炎が全国的に感染拡大し、県内でも感染報告が高い水準で続いている。感染するとしつこいせきが長期間続くという。手洗いや、せきエチケットといった感染対策を徹底するなど危機感を共有したい。
マイコプラズマ肺炎は小児や若者が比較的多く感染する。厚生労働省によると、報告される患者の約80%は14歳以下で、秋冬に増加する傾向がある。
感染すると発熱や全身のだるさ、頭痛、せきなどの症状が現れる。せきは熱が下がっても3~4週間続くのが特徴とされる。多くの人は気管支炎で済み、軽い症状が続く。
一般的に小児の方が軽症で済むが、一部の人は肺炎になったり重症化したりすることもある。まれに心筋炎や髄膜炎といった重篤な合併症を併発するとの報告もある。
感染者のせきのしぶきを吸い込んだり、接触したりして感染する。発症までの潜伏期間は2~3週間と長い。治療には抗菌薬が使われる。
県内では2021年3月以降、ほとんど感染報告がない状況が続いていた。それが24年夏ごろから継続して報告されるようになり、9月22日までの1週間で急激に増加した。定点観測している医療機関から報告された患者数は12人、1医療機関当たりに換算すると1・71人だった。その後の患者数は上下しながら、ほぼ全国平均並みで推移している。宇都宮市保健所管内からの報告数が多いのも特徴だ。
ほとんど感染報告がなかった時期は、新型コロナウイルス感染防止のためにマスクの着用や手指の消毒などが社会全体で行われていた時期と重なる。今からコロナ感染拡大期と同じような感染対策を取るのは現実的ではないとしても、できる範囲で取り入れてみてはどうか。
短時間の接触で感染する可能性は低く、極端に恐れる必要はない。だが家庭や学校、幼稚園など閉鎖された空間での濃厚接触は避けた方が無難である。普段から手洗いをしっかりする、感染した場合は家族間でタオルの共用を避けることが重要だ。せきの症状がある場合はマスクの着用を心掛けるべきだろう。
季節の変わり目を迎えた。寒暖の差が大きい日が続くと免疫力が低下しがちになる。症状が気になる場合は、医療機関を受診してほしい。