小山市で2004年9月、幼い兄弟が虐待を受けた末、思川に投げ落とされ命を奪われた事件を機に始まり、全国に広がった「オレンジリボンキャンペーン」。事件発生から今年で20年の節目を迎え、市はキャンペーンの発祥地として改めて啓発活動に力を入れながら、虐待の未然防止や子育て環境充実を見据えた「おやまモデル」のまちづくりを進めていく。
児童虐待を巡っては、防止に向けた法制度や行政組織体制が整いつつある一方、県内外で相談対応件数は増加・高止まり傾向にある。核家族化に伴い、孤立する中で子育てする親が増えている状況などが大きなリスク要因の一つとされる。虐待を特殊事例と捉えず、子育て環境全般にかかわる社会課題であるとの認識を全県に広めたい。
キャンペーンは児童虐待防止のシンボルとしてオレンジリボンを広める市民運動。市内の市民団体「カンガルーOYAMA」が始めた。「子どもたちが太陽のように明るく温かく穏やかに成長してほしい」との願いを込めてリボンを手作りし、イベントや公共施設などで配布。虐待防止の啓発や認知度の向上に貢献してきた。
市はキャンペーンを継承・発展させ、おやまモデルのまちづくりを目指し本年度、市民参加型ワークショップを5回連続講座として企画。子育て支援に関わる市民らが参加し3回の講座を開き、子育て世代が身近な場で気軽に相談できる居場所の設置・拡大などの提案が上がっている。実効性ある施策につなげたい。
カンガルーOYAMAの大久保幸子(おおくぼさちこ)会長(75)も参加し「子育て全般を支援することが虐待を遠ざける」と期待を込めており、機運が高まる「地域ぐるみで子育て」を行政も一体となってサポートすべきだ。
市はこれに合わせ、民間の子育て支援団体同士の連携組織創設を促すとともに、協力体制の強化を進める考えだ。市も来年度、子育てから教育までの諸課題に一体的に対応する体制づくりを目指す。
オレンジリボンはJR小山駅西口周辺で今月20日に開かれる「西口まつり」のほか、11月の児童虐待防止月間に宇都宮市で開かれる全国フォーラム、小山市での県民の集いでも周知される。市民の意識高揚や主体的な行動につなげる機会としたい。