「ジェンダー発信の現場」をテーマにした分科会では、ジェンダー問題についてどう報じ、報道現場の意識がどう変化してきたかなどについて話し合った。
NHKエンタープライズの原田由香里(はらだゆかり)氏は、現在取り組んでいる「#BeyondGender ジェンダーをこえて」を紹介した。男らしさ・女らしさの思い込みなど、ジェンダーに関する課題や解決につながる情報を番組横断的に発信。「『ジェンダー問題を取り上げづらい』という悩みを抱える制作現場が連携することで、企画を立ち上げやすくなってきた」と話した。

男女の出演比率のバランスに配慮した制作を目指す英BBC放送発のプロジェクトにも参加し、「制作サイドのジェンダーバランスにも目が向くようになった」。一方で「取り組みは日々綱渡り。トライアンドエラーをしながら、社会の意識変容につなげたい」と語った。
下野新聞社の荻原恵美子(おぎわらえみこ)氏は、昨年の先進7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合の本県開催を機に始まったキャンペーン報道「ジェンダー未来へ」を挙げ、読者アンケートなどを踏まえた報道や反響を報告した。
「潜在的な違和感を形にするという意味で、新聞には物差しとしての存在意義がある。不断の点検を続けたい」と述べた。

多様性を尊重する報道や事業、組織づくりの指針となる「DEI宣言2024」を5月に公表した神奈川新聞社。秋山理砂(あきやまりさ)氏は地方紙として多様な視点を示し、男女格差是正に向け、足元から取り組んでいく姿勢を強調した。
昨秋開かれた日韓女性記者フォーラムについても報告し、「男女半々でないと届けられない情報がある。メディアが変わらないとその先にいる読者も変われないと痛感した」とメディア側の責任も指摘した。
■座長
青木友里氏(下野新聞社論説委員)
原田由香里氏(NHKエンタープライズ第1制作センター社会文化部シニア・プロデューサー)
■報告者
原田由香里氏
荻原恵美子氏(下野新聞社前編集局くらし文化部長、現販売事業局販売事業センター長)
秋山理砂氏(神奈川新聞社取締役経営戦略・編集・論説・デジタル編集・システム担当)