「もう一度問い直す 私たちの原点」をメインテーマに、マスコミ倫理懇談会全国協議会の第66回全国大会が3日、宇都宮市で始まる。4日までの2日間、災害時の取材・報道や「政治とカネ」、ジェンダーなどをテーマに各社の事例報告や課題検討が行われる。本県開催は初めてで、参加する報道関係者を心から歓迎したい。激変するメディア環境の中、報道の原点を問い直す議論を深め、読者や視聴者の信頼に応えるメッセージの発信を期待する。

 マスコミ倫理懇談会は「マスコミの倫理の向上と言論・表現の自由の確保」を目的として、1955年に東京で創設された。全国に設立された各地区の懇談会とマスコミ関係主要団体が58年に全国協議会を結成した。

 新聞、放送、出版、映画、レコード、広告などの業種の194企業・団体が加盟し、各地区で定期的な研究会などを行っている。

 全国大会は、コロナ禍の2020、21年を除き、毎年秋に開催している。熊本大会(08年)では、熊本出身で初めて死刑囚として再審無罪となった免田栄(めんださかえ)さん、新潟大会(10年)では、拉致被害者の曽我(そが)ひとみさんが講演し、当事者が人権問題を発信する場ともなった。

 今回は、ジャニーズ性加害報道、松本人志(まつもとひとし)氏に関する報道などをテーマに対談が行われる。特にジャニーズ問題は、時機を逸していると批判されぬよう、十分な検証であると評価される議論に深めてほしい。

 分科会のテーマも災害取材、実名報道、否認するほど身柄拘束が長引く「人質司法」、人権報道、ジェンダー、政治とカネ、生成AIなど今日的なものがそろった。業界内の議論ではなく、広く読者、国民の心に届く言葉で語られることを願う。

 過去20年のテーマを追うと「岐路に立つ」「変革の時代」「再確認」「責務と自律」「自由と責任」「いま問われる」などの言葉が並ぶ。裏返せば、マスコミは常に、その存在意義と信用性を問われ続けてきたということだ。

 常に激動のメディア環境で、歴代の取材記者たちは、社会問題への感性を研ぎ澄まそうと、議論を続けてきた。来年はマスコミ倫理懇談会発足から70年を迎える。節目の年に向け、宇都宮大会の成功を願う。