
北陸新幹線の金沢-敦賀開業後、福井県内沿線で騒音測定が本格化している。騒音を訴える住民の声が福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に寄せられる中、調査は鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が既に着手、福井県も今秋から実施する予定だ。先行開業した石川、富山県では2015年から継続して調査が行われ、これまで毎年基準値を上回る地点が確認されている。
騒音に関する意見は、4月上旬に行ったふく特のアンケートで複数挙がった。「思った以上にうるさい。生活に支障あり」(福井市50代男性)、「新幹線の線路近くなのでうるさくなった」(鯖江市40代女性)、「新幹線がこんなに多く走るとは思わなかった。結構音が聞こえる」(福井市60代男性)などがあった。
福井県内で騒音測定
福井県環境政策課によると、本年度は環境省の委託事業として今秋、県内区間を対象に騒音計で測定。同省の環境基準で定める住居地域70デシベル以下、商工業地域75デシベル以下かどうか測り、基準値を上回る箇所があれば鉄道・運輸機構やJR西日本に改善を要望する。具体的な測定地点は同省と協議中で、同課は「本年度の結果を踏まえ来年以降も行うか判断する」としている。
15年に金沢まで先行開業した石川、富山の両県では本県と同様、初年度は環境省の委託事業で騒音を測定した。16年度以降は、各県と沿線自治体が主体となり毎年調査を続けている。これまで両県とも基準を上回る地点がゼロになったことはなく、直近の23年度は富山県で10カ所調査し基準超過は5カ所、石川県は16カ所のうち9カ所で基準値を超えた。富山県環境保全課の担当者は「環境基準を達成するため、防音壁のかさ上げや吸音板の設置などの対策を要請している」と説明。両県とも本年度も騒音の調査を行う方針だ。

鉄道・運輸機構も
一方、鉄道・運輸機構も独自に調査を行っている。金沢-敦賀間のトンネル区間以外を対象に昨年10月から測定を開始。公道での測定は完了し、25年度末にかけて沿線の建物の敷地内で測定する予定だという。
基準値の超過が確認された場合、防音壁のかさ上げや吸音板の設置などの音源対策を実施するほか、沿線建物の敷地内では、家屋側の防音や防振工事の費用助成を行う場合もあるという。住宅防音工事の費用助成は石川、富山県で既に行われているものの、同機構は「件数については回答を控える」としている。
「高架で日陰」補償判断へ 北陸新幹線沿線 年度末まで調査

「ふく特」には、新幹線高架の建設によって「日当たりが悪くなった」という意見も寄せられている。自宅のすぐ近くに高架ができた福井市内の女性は「毎日昼過ぎに日陰になる」と話す一方、「鉄道・運輸機構が調査を行うと知ったが、その後どうなったのだろうか」と首をかしげる。
女性の自宅は高架ができて以降、午後2時ごろから日差しが入らなくなった。以前に町内会の回覧板に「新幹線高架橋による建物日陰調査のお知らせ」と書かれた鉄道・運輸機構からの文書があったという。女性は「日当たり調査をしたのなら結果を知らせてほしい」と話す。
鉄道・運輸機構に尋ねると、2023年5〜7月と同年9〜11月に沿線自治体を通じて日当たり調査の周知文書を配布した。新幹線施設による日当たりの影響範囲を図面で確認した上、対象範囲内の家屋で日陰になる時間を算出。補償の有無を判断するという。
同機構は「国土交通省の通知に基づき、補償対象となった方に対して日陰になったことによる暖房費、照明費などの増加費用を負担する」と説明。事業期間は「24年度末まで」としており、高架ができ、新幹線が開業した後も、しばらく沿線での調査は続きそうだ。
(福井新聞)