被爆体験の証言者や伝承者として講師を務めた(右から)忍岡さん、河野さん、尾形さん=28日午前、広島市中区

 核のない世界恒久平和の実現に向けて広島市が主催する国内ジャーナリスト研修「ヒロシマ講座」が28日、同市中区の広島国際会議場で始まった。初日は被爆体験証言者や、本人に代わり体験を語る伝承者が講師を務め、平和への願いと語り継ぐことの大切さを訴えた。

 同市は2012年度から伝承者の養成事業に取り組み、現在計264人が活動している。この日講師を務めたのはいずれも同市在住で、証言者の河野(こうの)キヨ美(み)さん(93)、河野さんの伝承者の忍岡妙子(おしおかたえこ)さん(75)、家族伝承者の尾形健斗(おがたけんと)さん(33)の3人。

 河野さんは、原爆が投下された1945年8月6日、爆心地から35キロ離れた郊外の自宅にいた。翌日、2人の姉を捜しに母親と同市に入り、惨状を目にした。直接被爆したわけではなく、体験を語ることに後ろめたさもあったが「死んだ人の代わりに伝えなくちゃと思った」と語った。

 忍岡さんは、教員として平和教育に携わった経験を生かしたいと定年後に養成事業に応募。「若い人に(戦争の)責任はない。ただ、知ったら繰り返さない責任はあることをしつこく言っている」と語気を強めた。尾形さんは祖父(95)の被爆体験を伝承するため本人に聞き取りしたが、「当時のことを思い出させていいのかという葛藤もある」と明かした。

 講座は本紙を含む全国各地の記者10人が参加。平和記念式典翌日の7日まで行われる。