日銀が3日、20年ぶりに新紙幣を発行した。1万円札の肖像は「渋沢栄一しぶ(さわえいいち)」、5千円札は「津田梅子(つだうめこ)」、千円札は「北里柴三郎(きたざとしばさぶろう)」になった。身の回りで目にする機会はまだ少なく、自分の手元に巡ってくる機会を今か今かと待ち望んでいる人もいるのでは。下野新聞社が4〜9日、LINE公式アカウント「とちぽ」を通じて新紙幣に関するアンケートを実施したところ、新紙幣を手にした人は一握りだった。

20年ぶりに発行された新紙幣
20年ぶりに発行された新紙幣

 アンケートは、802人から回答得た。このうち、「すでに新紙幣を手にしたことがある」と答えたのは35人、わずか約4%にとどまった。ちなみにいつ手にしたのか尋ねたところ、35人中、最も多かったのは発行翌日の4日と5日で、それぞれ12人いた。続いて初日が7人。手にした人の約89%は発行から3日以内に新紙幣に触れていた。

 ではどのように手にしたのか。トップは「両替・現金引き出し」の19人。次いで「家族・知人などから」が13人、「その他」2人。「買い物のお釣り」も1人いた。新紙幣はまだ流通が限られ、偶然手に入った人はかなり幸運かもしれない。

 ちなみに記者も発行初日、両替で新紙幣を手に入れた同僚から、新千円札を譲り受けた。真新しい紙幣の手触りを確かめ、紙幣を傾けて北里柴三郎の顔の向きが変わる3Dホログラムを楽しんだ。20代の記者にとって、新紙幣の発行自体が初めて。新鮮なデザインに心が躍ったと同時に、自分の手元に次いつ巡ってくるか分からないと思うと、まだ使えずに大切に財布に保管している。アンケートでも、新紙幣を手にした人のうち、29人(約83%)は「使っていない」と答えた。

 2021年11月に発行された新500円硬貨。投入から約2年8カ月が経過した今も対応していない自動販売機が存在する中、新紙幣への対応は進むのか、懸念される。ちなみに、アンケートで新紙幣を使用した際にトラブルがあったか尋ねたところ、回答した6人全員が「なかった」。

 新紙幣の肖像になった3人が「どんな人物か知っているか」と尋ねたところ、やはり最も知られていたのは、福沢諭吉(ふくざわゆきち)に代わる1万円札の“顔”になった渋沢栄一。「日本の資本主義の父」と呼ばれる実業家で、「よく知っている」(83人)、「まあまあ知っている」(447人)を合わせると、計530人(約66%)が知っていた。対して、「あまり知らない」が224人、「まったく知らない」は48人だった。

 次いで、知られていたのは近代医学の基礎を築いた北里。「よく知っている」(101人)、「まあまあ知っている」(395人)を合わせると、計496人(約62%)が知っていた。最後に、女性教育の先駆者である津田については「よく知っている」が69人、「まあまあ知っている」が369人で、計438人(約55%)の人が知っていると答えた。

 新紙幣は、150年以上培われてきた「偽造防止技術」の結晶とされるデザインも注目を集める。3Dで表現された肖像が回転するという、世界で初めて銀行券へ採用された「3Dホログラム」、目の不自由な人が指で触って識別できるざらざらとした感じの「識別マーク」など、さまざまな技術が投入されている。

 デザインについての設問で、「とてもいいと思う」(171人)、「まあまあいいと思う」(265人)は計436人(約54%)が評価した。最多は「どちらでもない」の271人(約34%)で、「あまりいいと思わない」と「まったくいいと思わない」は計95人(約12%)だった。

 新紙幣を発行すること自体については、反対(どちらかといえば反対を含め)が計92人(約11%)。対して、「賛成」「どちらかといえば賛成」が計392人(約49%)と多かった。

 賛成の理由としては「偽造防止の観点から絶対に必要だから」など、偽造防止を理由に挙げる人が多かった。「気分一新」「景気刺激」といった意見や、中には「思い出深い旧札が使われなくなっていくことが寂しい気持ちもある」という人もいた。

 一方、反対の人からは「キャッシュレスの時代になぜ?」「自動販売機など使えないものが多い」といった声が目立ったほか、「券売機等の対応に時間とコストがかかる」との指摘も。「諭吉さんに愛着があったし、お金を使い過ぎた時さよなら諭吉と言っていたから」「外国の紙幣みたい」などの意見も寄せられた。

 これから流通していくことになる新紙幣。20年に一度の“レア感”は今しかない。