「随筆集 麗子の肩かけ」

 2021、22年度の県芸術祭随筆部門で最高賞の文芸賞を受賞した宇都宮市、楡木佳子(にれぎけいこ)さん(84)が、自身初となる書籍「随筆集 麗子の肩かけ」を出版した。朗らかな人柄やその暮らしぶりが身近に感じられる、受賞作含む33編を収めている。

 2回の受賞を経て、「今後も書き続ける意欲を保つには上梓(じょうし)しかない」と考えたという楡木さん。「思いが形になりうれしい」と顔をほころばせ、読者に向けて「『おばあさん』だから、と諦めないで。どなたかの生きる力になれたら」と語る。

 宇都宮女子高から青山学院大英米文学科に進み、読書好きでもあった楡木さんだが、随筆を学び始めたのは7年前。友人に誘われ、本県の随筆分野をけん引した故・小島延介(こじまのぶすけ)氏主宰の「文芸そぞろあるきの会」で研さんを積んだ。今作の後書きに「書き始めてみると随筆は意外に難しくて、先生や仲間たちの指摘に頭を抱える日々」とつづったが、18年には早くも同部門準文芸賞を射止めている。

 今回の33編は書きためた中から選んだ。冒頭に収めた「愛しのルンバ」は初めて書いた作品というが、ロボット掃除機の「あるある」エピソードをユーモアたっぷりに紹介。21年の文芸賞を受賞した表題作では、買い物帰り、ある家の窓辺に見えた編み物へ深く思いをはせた。日常や家族、旅のことといった柔らかいテーマに鋭い観察眼で迫る筆致に、どの作品もぐっと引き込まれる。

 東洋出版、1100円。