車の通りが多い国道461号沿いにあって、森に挟まれた静かなたたずまい。「蕎麦遊膳(そばゆうぜん) 雅(みやび)」が立つ高原山ろくの矢板市倉掛地区は方々で水が湧き出る土地柄だ。
豊富な地下水を活用する同店の人気メニューの一つ「天せいろ」は、水や素材の良さを生かす店主、竹澤雅巳(たけざわまさみ)さん(77)のこだわりが詰まった一品だ。
ひき立てのそば粉「那須野秋そば」は水回しの際、香りが立つ。毎朝打つ麺はアルカリ性に近い地下水でゆで上げるため、ゆで細りしないという。
きめ細かな特選薄力粉を溶いて作る天ぷら衣にもこの水は欠かせない。カラッと揚がったエビは引き締まった身の甘みが口に広がって、思わず天を仰ぐおいしさ。野菜類はナス、カボチャなどの定番に加え、店員、友人、家族らから提供を受けた季節の山菜などが付く。この日はシロキ(コシアブラ)だった。
竹澤さんの実家は塩谷町玉生の元和菓子店。半導体メーカーを脱サラ後、近くに店を開業して24年たつ。こだわり抜いた味、竹澤さんの気さくな人柄にひかれて週2、3回通う客もいるという。竹澤さんは「家族のような付き合いの人もいる。お客に恵まれた」と柔和に笑う。
▼メモ 天せいろ(二八そば)は1430円。十割そばは220円増し▽矢板市倉掛922の11▽営業時間 ランチは午前11時半~午後3時ごろ。夜は午後5時~8時▽水曜定休▽(問)0287・40・1486。