北陸新幹線の県内開業を控えたJR福井駅のタクシー降り場=福井市の同駅東口

 「早朝に駅へ行く際、タクシーの予約ができず困った」との投稿が、福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に寄せられた。調べてみると、午前6時台にJR福井駅発の特急に乗ろうとしても、他の公共交通機関はほぼ動いておらず、頼みのタクシーは運転手不足を理由に予約しづらいのが実情のようだ。北陸新幹線も同時間帯の列車があり、開業前から県民の“足”の確保が課題となっている。

 福井市南部の30代女性は昨年秋、1泊2日で大阪に行く予定を立て、午前6時20分福井駅発のサンダーバードの切符を買った。出発1週間前、ネット検索で出たタクシー数社に電話したが「予約は受け付けていない」などと断られ続けた。間に合う時刻に運行している路線バスはない。マイカーで駅周辺の駐車場を使う手もあるが「飲酒できないし、疲れた帰りに車に乗るのは不安」。結局、当日朝は家族に車で駅まで送ってもらったという。

「以前は予約できたのに…」

 「以前は予約できた覚えがあるのに」と女性。北陸新幹線で福井駅発の最も早い列車は午前6時32分発だ。「新幹線が来ても早朝には乗れない人も出てきそう。観光客だけでなく、県民も便利に駅へ移動できればありがたい」と話す。

 福井市を含む福井交通圏で営業しているタクシー会社に聞いてみた。前日までの事前予約制だという法人タクシーの経営者は「早朝は3台だけで、数日前には予約で埋まってしまう」と説明。別の会社は「今は早朝1台の確保がやっと。高齢化で深夜・早朝の勤務を頼める人がいなくなり、予約を受けたくても受けられない」という。「午前7時台からの配車のみ。時間指定の予約は受け付けていない」「同業者を紹介することすらある」という会社もあった。「2日前までに予約があればシフトを変更して対応する」と前向きに答えたのは1社だけだった。

早朝予約は常連のみ

 47事業者でつくる県個人タクシー協同組合も「現在、組合を通した早朝予約は受け付けていない」。常連客と事業者が直接やりとりするケースだけだという。

 各社に背景を尋ねると答えは一様に「運転手不足」。ある会社の担当者は「早朝は最も手薄な時間帯。最悪1件、多くて数件のために運転手を確保できない」と打ち明けた。

 県タクシー協会によると、県内の法人会員44社の運転手は約900人で、4年前より約200人減った。高齢化も進み「届け出台数より運転手が多いのは数社だけ。県内全域で早朝予約に対応しづらい状況になっている」という。

 さらに今春の基準改正で、日勤1カ月の拘束時間の上限が299時間から288時間になるなど、運転手の労働時間に関する規制が強化される。協会の佐々木貞明専務理事は「ますます人材確保が必要になる」と指摘する。

 協会は県と連携し、ハローワークで出張説明会を開いてきたほか、昨秋の運賃改定で賃金アップを図った。県の補助を受け▽配車アプリ▽キャッシュレス化▽自動日報システム-の導入で効率化も進めている。昨年11月から新規運転手の講習受講者が増えてきたのが明るい兆しだという。佐々木専務理事は「人材確保が進めば、早朝の予約対応もうまく回ると期待する。地元の利用者も使いやすいタクシーにしていきたい」と話している。(福井新聞)