岡山県笠岡市内のガソリンスタンド店頭で価格を表示する看板

 ロシアのウクライナ侵攻などの影響で、高止まりが続いているガソリン価格。政府が補助金で価格抑制を図る中、「(広島県)福山市内と(岡山県)笠岡市内の価格差が大きい」と訴えるメールが、広島県福山市の会社員男性(58)から中国新聞編集局に届いた。取材すると、県境を挟んで変わる販売環境が浮かび上がった。

 2023年11月末、岡山県里庄町へ福山市から向かう途上、国道2号沿いのガソリンスタンドの掲示価格を追ってみた。

 福山市内ではレギュラーガソリン1リットル当たりが171~179円。ところが笠岡市内に入ると、スタッフ給油の店なのに158円という看板が目に飛び込む。さらに進むと155円の掲示も。里庄町に入ると上がったが、それでも157~159円だった。

 翌12月15日、再び一帯を走らせると福山市内の価格にあまり変化はなく、笠岡市内は163~165円。「11月だけで仕入れ値が5円ほど上がった。価格を変えられず困っていたが、12月に入ってようやく上がってきた」とある店のスタッフ。それでも福山市内との差は感じた。

 編集局にメールをくれた男性は「あまりの価格差。腹立たしくもあり不思議でもある」と話す。

 この価格差について、笠岡市内のある事業者に聞くと「福山は高くない。全国平均だ。笠岡がおかしい」との答えが返ってきた。石油情報センター(東京)の11月27日調査では全国平均が174・0円。笠岡市内の価格と大きく離れていた。

 同時期の広島県は175・3円、岡山県は170・6円。岡山県内の方が低い傾向にある。同センターに問い合わせると、広報担当者は岡山県倉敷市周辺が安いエリアだと知っていた。値段について「価格は自由化されている。店によって違うのは当然」と前置きした上で、価格を決める一般的な要素として、輸送費▽店の経営規模▽競争環境-の三つを挙げた。

 輸送費は製油所からの距離もあるが、離島への船便や山間部のトンネル通行などによるタンクローリーからの積み替えが大きく響くそうだ。また大量に販売できる店は、利幅を抑えても経営が成り立つ。そして、幹線道路沿いに近接して店があると競争で価格が下がるという。

 笠岡市はどうか。市内に店を持つ会社の役員は「商社の余剰在庫を扱うなど、元売り大手とは別の仕入れルートを持つ店が笠岡や倉敷にはある」と、安値を主導する店の存在を示唆する。市内の別の会社の幹部も「頑張った値段を出している元気な店が、倉敷にかけて多い」と話す。店も福山より大きいようだ。

 ガソリンは、価格が違っても品質に大きな差が出る商品ではない。店ごとの特徴付けは難しく、価格勝負になる。この幹部も本来は175円ぐらいにしたいというが、「数日ならともかく『いつ見ても高い』となると、お客を裏切ることになる」。販売価格は「隣の店を見て決めている」というのが現状だった。

 ガソリンスタンドの経営は厳しい。車の燃費が向上。従来は車検やタイヤ交換など燃料販売以外の収益源もあったが、近年は自動車ディーラーが顧客への営業を強化する中で先細っている。

 ある事業者からは「人手確保のための待遇改善や事業モデル転換に向けた投資も必要」との声も聞かれ、業界への危機感や価格競争への疲れも垣間見えた。

 (中国新聞)

◇中国新聞のサイトはこちら