陸上は大好きでしたが箱根駅伝は大きな大会ぐらいの印象でした。筑波大に入学した一番の理由は、保健体育の先生になるためでしたから。
1年生の時はメンバーに入ることもないだろうと。ところが故障者や体調不良者が続出し、出番が回ってきました。自信なんてありません。8区(21・3キロ)を走り切るだけで精いっぱい。15キロ過ぎで遊行寺の坂を上り終えたら、意識がもうろうとしていました。
しかしゴール後の出来事で気持ちが変わりました。大手町で部員が整列すると先輩が泣いて謝罪するんです。チームは総合11位。10位までのシード権を逃しました。本当に重みのある大会なんだと実感しました。
2年生では予選会を突破し、本戦で9区(22・7キロ)を任されました。この時の出場校は15校。筑波大は1区最下位で始まり、復路は繰り上げ一斉スタートでした。たすきをもらっても何位かは分かりません。ただシード権外は間違いないと、必死に前を追いました。
他校の運営管理車から「筑波大はオーバーペース。絶対つぶれるぞ」という声が聞こえ、なにくそと思いました。結果的に私のところで12位から9位に上がり、シード権を獲得。劇的でした。区間2位もうれしくて、ダブルの喜びでしたね。
筑波大は前身の東京高等師範学校時代の第1回大会で優勝しています。かつては本戦に連続出場していましたが、最近で予選会を突破できたのは4大会前の第96回大会だけです。
箱根駅伝には競技レベルの高さ、人の心を打つ感動がある。各大学が資金や入試制度を使い、強化に注力するのは当然です。だからこそわれわれはノウハウや創意工夫、努力で勝負できると証明したい。筑波大の学生たちは本分の学業に追われながら、本当に頑張っています。そのご褒美として、あのステージに立たせてあげたいと強く思っています。
ひろやま・つとむ 1966年、真岡市生まれ。真岡高3年で全国高校駅伝出場。筑波大から資生堂に入り、1990年福岡国際マラソン2位。2015年から筑波大駅伝部監督。19年の箱根駅伝予選会を突破し、母校を26年ぶりの本戦に導く。