田園地帯にある店、というより小屋。「船着き場のイメージなのですが、入るには勇気がいりますよね」。店主石川貴之(いしかわたかゆき)さん(47)の笑顔に、正直にうなずいた。
発酵に通常の3倍の時間をかけ、甘みとうまみを凝縮したふっくらもっちりのパンが主役だ。モンブラン、チョコホイップ、明太ポテサラ、焼きそば、ミートソースチーズなど、具材はスイーツ系から総菜まで18種類前後をそろえる。
「おいしいコッペパンさえあれば、何でも挟んで商品を増やせる」。全て一人で手作りしているからこそ、背伸びをせず、コッペパン一筋でやってきた。
1個130~300円。子どもが小遣いで買えて、自転車の高校生も農作業中のお年寄りもふらっと寄って、食べて喜んでくれる。そんな店を目指してきた。
宇都宮学園(現文星芸術大付属)高で甲子園の夢を追い、おなかがすいたらいつも学食のコッペパンを食べた。17年間公務員として働き、思い出の味に懸けて独学でパン作りを研究して店を出した。苦労しながら何とか10年がたった。
寒さが厳しくなると店の前の五行川に多くのハクチョウが集う。純白の風物詩を眺めながら食べれば、おいしさもひと味増しそうだ。
▼メモ 真岡市田島1135の2。午前10時~午後6時(1日約200個。売り切れ次第終了)。日、月曜定休。(問)0285・82・9292。