取材班のひとりが最近、教職を目指す大学生として教育実習という貴重な体験をしてきた。私たちもやってみたいけど、実習には行けないし…何か学校以外の場でも、子どもたちへの教育“見習い”体験ができる所ってあるのかな? ということで、今回は子育て支援・学習サポート・教育実習の体当たりチャレンジ3本立ての熱血散歩へ!(泉浦光(いずみうらひかる)、岡結菜(おかゆいな)、橋本慎之介(はしもとしんのすけ)、若菜恵実(わかなめぐみ))

第2の家庭目指す 大山やんちゃクラブ(那須塩原)
まずは那須塩原市の「大山やんちゃクラブ」で、「放課後児童支援員」の補助体験。ここは仕事や病気、出産等によって昼間保護者がいない子どもたちを、放課後や長期休業日に預かる公設民営の施設だ。
子どもたちと、仲良くなれるかなぁ。ドキドキしながらドアを開けると、あっと言う間に取り囲まれた。「だれ? 何しに来たの? 遊びに来たの?」と元気いっぱいの質問攻め。「白鴎大学から来た今日限定の先生だよ」と学生記者の名刺を渡すと、うれしそうに「よろしくね!」と握手をしてくれた。

教室を見渡すと、絵を描く子、おままごとをする子、宿題をする子、している事が皆バラバラだ。そっか!ここは学校でも塾でもなく、子どもが普通に生活を送る場所なんだ。強制的に全員で何かをするというのではなく、それぞれの生活リズムで過ごせる“第2の家庭”を目指しているという。
そんなお話を聞いていると…トントンと肩をたたかれる。振り返ると、子どもたちが「さっきのお返しです、どうぞ!」と作りたての手書きの名刺を渡してくれた。これには支援員の先生もびっくり。
外ではたくさんの子が一輪車に乗っている。「お兄さんが一緒に練習してくれたんだ」とスイスイ乗りこなす男の子は、小学2年生。大きい子が小さい子の面倒を見る…まるで大家族みたいで“いいね”!
そんな“兄弟”達を見守るのが、放課後児童支援員の仕事だ。一日お手伝いを体験してみて、ヘトヘトになったけど子どもたちのパワーに元気をもらえた。
楽しく学べる場に トライスタディールーム(宇都宮)
とちぎYMCAが指定管理者として運営している公共施設「宇都宮市青少年活動センター」には、「トライスタディールーム」がある。市内在住の小中学生をはじめ皆が楽しく学習できる、青少年の居場所だ。宿題や受験勉強の追い込みに来る子。発達に障害を抱える子。学校に行きづらい子。いろんな子のサポート役を務める少し年上のお兄さんお姉さんたち=ユースボランティア・リーダーの仕事を体験させてもらおう。

取材日、宿題を手にやって来た2人の子は、すぐに机に向かいペンを走らせ始めた。太陽の動きを学ぶ理科の問題で、リーダー初体験の学生記者はサポートしようと隣に座って解説を試みたが、2人の頭のはてなマークはなかなか消えない。
一方、ベテランのリーダーさんは「暗闇の部屋に行って実際に見てみよう」と一緒に隣室へ移動すると、早速実験開始。暗い部屋でペンを立ててスマホのライトで光を当てると、角度によって影が伸びる。なんて丁寧で、親身に寄り添っているんだろう! 子どもたちのはてなマークは、一瞬で消えた。
最後には、ワークブックから今日やった分のページの付箋をたくさん剥がす。「こんなに頑張れた!」と満面の笑みの子どもたちを見て、リーダーも自然と笑顔。理解が深まると、リーダーとの信頼関係も比例して深まる。年は離れていても、心の距離が近くて“いいね”!
ユースボランティア・リーダーの中には、子ども時代ここに通っていた人もいる。「当時、リーダーが名前を呼んでくれたり、話しかけてくれたりしたことがうれしかった。だから自分も、気配りのできる優しいリーダーになりたい」。こうして、憧れが代替わりして受け継がれていくんだな。
SDGsの目標の一つ「質の高い教育をみんなに」達成に向け、学習習慣の定着を目指すこの活動。将来的には、この地域でも増えてきた外国人の子どもたちにも活用してほしいという。今後、より多くの市民の方の“居場所”となりますように。
疲れたけど達成感 母校での教育実習
そしていよいよ、実際の教育実習体験記! 泉浦が母校で実習生として中学3年生たちと触れ合い、社会科の授業をしてきた。
初日、「生徒と積極的にコミュニケーションを取ろう」と決意して教室に入ると、「実習生ですか?」「大学どこですか?」などといきなり質問攻め。なんだか楽しい3週間になりそうだ。
1週目はさまざまな先生の授業を見学。生徒1人1台のタブレット、電子黒板の多用など、自分が中学生の頃よりもはるかに授業は進化していた。

2週目からは、実際の授業にチャレンジ。しっかりと準備し、いざ初回授業へ! ところが、板書予定だった「今日のめあて」を早速書き忘れたり、予定より10分も余ってしまったり。それでも、指導の先生から「ミスは仕方ない! 次、気をつけよう」という優しい言葉をかけて頂き、徐々に緊張はほぐれていった。
3週目には、他の先生方にも見て頂く研究授業に挑んだ。準備万端で臨んだ本番だったが、「先生、授業プリント配られてないです」と言われ慌てて配布。「大谷翔平」と板書するはずが「大平翔平」と書いて生徒も先生方も大笑い。焦りまくりでなんとか授業を終え、いったん教室を出てから戻ってくると、黒板に模造紙が貼ってあるではないか。「研究授業お疲れさまでした!」--やりきった、という達成感が一気に湧き上がった。

生徒からの手紙や生活の記録に並んだ「泉浦先生の授業楽しかった」「面白かった」の文字。本当に疲れたけど、この職業選択をやめようかなとは全く思わない“いいね!”な3週間だった。
散歩を終えて
“不足”と“熱”を実感
現在、県内の全市町には「大山やんちゃクラブ」のような放課後児童クラブが計527カ所あるけれど、支援員はまだまだ足りません。「トライスタディールーム」のような自由な施設の需要も増していくでしょうし、教育実習では先生達の仕事量の多さを目の当たりに。人手不足と担い手の熱さを、共に実感しました!
