2018年の秋鹿地区体育祭の様子=松江市岡本町、秋鹿小学校(提供)

 松江市内の地区で住民運動会を取りやめる動きが出ている。背景にあるのは、人口減少と少子高齢化。出場選手の確保が難しくなった。そもそも「やる意味があるのか」といった声もちらほら。地域で長年続いた行事が時代に合わなくなり岐路に立たされている。

 「運動会をやめようと思います」

 今春、松江市の秋鹿体育協会の馬庭豊会長(67)が役員や委員が出席する全体会で提案すると、異を唱える者はほぼなく、60回近い回数を誇る毎年6月の地区の運動会は、あっけなく中止になった。

 秋鹿は人口1746人(高齢化率43・18%)で5年前から約200人減少した。馬庭会長は1期2年の会長職を10期続けるが、運動会継続の難しさを感じ始めたのは2018年ごろからだった。

継続の工夫も限界

 例えば綱引きは、合同チームを増やして全体のチーム数を減らし、出場できる年代も「20代」「30代」「40代」などと細かく区切っていたのを「40代以下」「40代以上」のように大まかにするなど工夫。それでも限界を迎えた。

 もともと新型コロナウイルス禍で中止が続いて、「やらなくてもいいのではないか」との考えも広がった。住民の半数近くとなる700~800人が12地区に分かれ、親睦を深めつつ競い合う交流の場だったが、馬庭会長は「やりたい気持ちはあるが、もう難しい」と漏らした。

 松江市内の複数の地区体育協会では、取りやめはせずとも種目減に加え、年代別や「地区対抗」を廃止したところもある。多くの関係者が口にする問題は「若者がいない」「地区ごとの人口の偏り」「出場者、運営者の負担増」だった。

 人口1万2900人の古志原も運動会を中止した地区の一つ。運動会は「古志原三大祭り」の一つに数えられてきた。高齢化率31・66%は秋鹿より低いが、古い団地と新興団地とで人口の偏りが激しいのが顕在化していた。

中止にぬぐえぬ寂しさも

 「中止すべきだ」。今年10月の開催について話し合う自治会の会合で、出席者からそんな声があふれた。採決で中止。古志原体育協会事務局は「横の連携を図るためにやってきた。なくなるのは寂しい」とした。

 運動会を巡り取材でさまざまな声が聞こえた。「運動会自体が苦痛」「ただただ面倒くさい」など。人数調整のため50代の人が20代の種目に出場するなど、いびつな状況も散見される。

 運動会は夏祭り、盆踊りなど他の地区行事と比べ規模が大きい。かつての家族総出、ご近所同士でわいわいがやがやといった風情、楽しみも人口減少、少子高齢化が進む実情では価値を失いつつある。中止が決まった古志原の体育協会も今後、簡略化を念頭に別のスポーツ体験会など、新たな手法を模索する。(山陰中央新報)

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