小口一郎の作品について篠崎さん(左)から説明を受ける武田町長=7日午前、茨城県下妻市

 足尾銅山鉱毒事件で強制廃村に追い込まれた旧谷中村(現栃木市)住民らの移住先となった北海道佐呂間町の武田温友(たけだはるとも)町長が7日、小山市出身の版画家小口一郎(こぐちいちろう)(1914~79年)作品を展示する茨城県下妻市桐ケ瀬の個人美術館「桐ケ瀬美術館」を訪れ、関係者と交流を深めた。

 同美術館は小口の作品計約50点を収蔵。足尾銅山や農村風景、工事現場の労働者などを題材にした版画のほか、油絵作品も多い。

 同町栃木地区をたびたび訪れ住民との交流を続ける小口一郎研究会代表の篠崎清次(しのざきせいじ)さん(76)=小山市三拝川岸=が仲介。武田町長は「二つの栃木」の歴史を次世代に継承する取り組みの参考とするため、東京出張の合間を利用して来訪した。今年1月には、県立美術館の小口一郎展も視察している。

 篠崎さんは小口作品について「水田を描いた作品には、減反に異を唱えるとの意図がある」などと解説。武田町長は「幅広い作品があることが分かった。社会性や訴えの力強さを感じる」と述べた。

 菊池博(きくちひろし)下妻市長(61)とも面会。同市にある関東鉄道騰波ノ江(とばのえ)駅に毎年展示される巨大カボチャの種のルーツが佐呂間町だという縁などを紹介し、自治体同士の関係づくりに意欲を示した。