栃木県宇都宮市の認可外保育施設「といず」(廃止)で2014年、宿泊保育中の山口愛美利(やまぐちえみり)ちゃん=当時9カ月=が死亡した事件を巡り、両親が市に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(林道晴(はやしみちはる)裁判長)は30日までに、両親の上告受理申し立てを受理しない決定をした。28日付。市は上告しておらず、指導監督する市の賠償責任は施設側の3分の1に当たる約2100万円を市、施設側が連帯して支払うよう命じた一、二審判決が確定した。

 一審宇都宮地裁判決と二審東京高裁判決は、施設側に約6300万円の賠償を命じた。市の過失を認めた一方、市の賠償責任は施設側の責任の二次的、補充的なものにとどまるとし、市には約2100万円に限り連帯して賠償責任があると判示していた。一方、両親は市の責任程度を3分の1に限定した一、二審判決を不服として上告受理申し立てを行っていた。

 愛美利ちゃんは14年7月26日未明、宿泊保育中に死亡した。事件前、子どもを毛布に包みひもで縛る行為や子どもの爪がはがされたといった通報が市に寄せられていたが、市は抜き打ちでなく施設に連絡して訪問していた。一、二審判決は、注意義務を怠った市の不適切な対応と愛美利ちゃんの死亡に因果関係があると認定した。

 事件を巡っては、元施設長の女は保護責任者遺棄致死罪で懲役10年、詐欺罪で同6月が確定しており、裁判は刑事、民事ともに終結した。

 決定を受け、愛美利ちゃんの父親(57)は「裁判が終わったので宇都宮市長には娘に謝りに来てほしい。娘の命を奪った施設を野放しにした市は責任をしっかり感じてほしい」と話した。代理人の寺町東子(てらまちとうこ)弁護士は「指導監督権限を持っている行政の責任を3分の1にとどめ、補充的な位置付けにしたのは納得できない。責任範囲を決める重要な論点なのに、受理されなかったのは不当だ」と指摘した。

 宇都宮市の高野裕之(たかのひろゆき)子ども部長は「痛ましい事故が起こらないように、保育施設の安全安心にしっかり取り組んでいく」と話した。