6月は家庭菜園などでサツマイモ苗の植え付けが盛んになる季節だが、フリーマーケットアプリ(フリマアプリ)上では、許諾や表示内容など種苗法違反に当たる可能性が高い苗の取引が横行しているという。熊本日日新聞「SNSこちら編集局(S編)取材班」で現状を探った。
「べにはるか」「べにあずま」も…
「べにはるか芋苗100本¥5500」「ベニアズマ100本¥5000」、シルクスイート(HE306)、ふくむらさき…。フリマアプリのメルカリで「さつまいも 苗」と検索すると、種苗法で権利が保護された登録品種のサツマイモ苗の写真がずらりと並び、10~100本単位で頻繁に売買されている様子が見られる。
登録品種のサツマイモを園芸店などで買って自分で育て、そこから得た苗を販売や譲渡する場合、品種を開発した企業や団体などの許諾を得る必要がある。加えてフリマに出品する際には、商品説明欄に登録品種であることや生産地、農薬の使用履歴などを示す義務がある。
しかし農林水産省輸出・国際局知的財産課によると、フリマアプリ上での出品の多くは表示が不十分。同課も「種苗法の理解が浸透できておらず、まだまだ周知が必要だ」と認める。
違反者には過料も
一方で2021年4月の種苗法改正により、登録品種であることのほか「海外への持ち出し禁止」「栽培地域の制限」といった情報を記載しない違反者には10万円以下の過料が課されることになった。記載せずに販売や譲渡すれば金銭的制裁を受ける可能性がある。
サツマイモ以外にも、多くの食用作物に登録品種がある。ただ、園芸店などでの国のPR不足を指摘する声もある。
熊本市内の園芸店の男性店長(43)は「種苗法啓発の国のポスターやキャンペーンは、ほとんど見たことがない」と話す。客が登録品種の苗や種を購入するたびに店側でアナウンスする余裕もなく、「法律に詳しくないお客さんがいる可能性もある。国は対策を講じてほしい」と訴えた。(熊本日日新聞)