多くの観光客が行き交う世界遺産「日光の社寺」門前町。信仰の地である日光は、明治期から外国人の国内旅行が自由になるなどして、観光地としての形が徐々に形成されてきた。
現在の本県が誕生した1873年、外国人向け宿泊施設として日光金谷ホテルの前身「金谷カテッジイン」が開業。今も日本最古の洋式ホテルとしての伝統を受け継いでいる。
足尾銅山の発展や山内御用邸の設置などで町の整備が進む。88年に馬車鉄道が通り、その2年後に現JR日光駅の日本鉄道日光駅が開設。清滝エリアに現在の古河電工日光事業所である日光電気精銅所が造られると、1910年に路面電車の日光電気軌道が日光-岩ノ鼻間に開通した。日光市山内の郷土史研究家岸野稔(きしのみのる)さん(76)は「近代の旧日光は工業と観光の二つの側面があった」と説明する。
町には旅館が立ち並び、29年に東武鉄道の日光線が全線開通するなどして人の行き来が活発に。99年の二社一寺の世界遺産登録を経て、2018年には1231万人が日光市内を訪れた。岸野さんは「時代とともに日光を訪れる目的が参拝から自由な観光へと変化してきた」と話す。
古くから交通の要衝である門前町の日光街道(国道119号)は現在、歩道の拡幅工事が進む。老舗が軒を連ねる一方、新たな店が進出。時代と共に雰囲気は変化しつつあるが、町としての骨格は変わらない。