東京23区に在住・通勤する人が東京圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)外に移住した場合に支給される「移住支援金」で、2022年度の栃木県内の交付件数は152件となり、21年度の74件から2倍以上に増えたことが4日までに、県や市町への取材で分かった。申請者のうち9割がテレワーカーだった。新型コロナウイルスの行動制限の緩和により「出社回帰」の動きも出始める中、県や市町は引き続き移住者の獲得に向けた対策を強化する方針だ。
移住支援金は東京一極集中の是正などが目的で、単身者に60万円、2人以上の世帯に100万円が支給され、18歳未満の子ども1人につき30万円が加算される。支給額の2分の1を国が負担し、移住先の県と市町が4分の1ずつ負担する。
22年度の県内の交付内訳は世帯が91件、単身者が61件。要件別ではテレワークが138件、就業が7件、起業4件など。子どもは26人分が交付された。交付総額は前年度比7880万円増の1億4320万円。県地域振興課は「テレワークの定着によって申請が急増した」と分析する。
市町別では宇都宮市が最多の31件、小山市が25件、那須塩原市が22件で、新幹線の停車駅がある3市で全体の半数を占めた。必要に応じて首都圏に通勤できる交通の利便性の高さが理由とみられる。このほか足利市11件、那須町10件、佐野市9件、栃木市8件など。
宇都宮市の担当者は「駅直結の施設に移住相談窓口を設けたり民放CMを打ったりと、さまざまなプロモーションを仕掛けた成果が出ている」と手応えを語る。
コロナ禍で高まった移住の機運を定着させようと、国は23年度から支援を強化し、子ども1人当たりの加算金を100万円に引き上げた。これに伴い、県も申請数を22年度実績の1・6倍に当たる240件と見込んで予算編成した。
県地域振興課は「テレワークを継続する企業と原則出社に戻る企業が二極化し始めているが、県の移住紹介サイト『ベリーマッチとちぎ』を改修するなどして情報発信を強化していく」としている。