名前の通り、店の目の前に送電用の鉄塔がそびえ立つ。店内からその幾何学模様を眺めつつ、おこわ御膳(1300円)を味わった。
せいろに入っているのはつややかな「桜おこわ」。桜の花の塩漬けが添えられ、春を感じる。口に運ぶとほのかに香りが広がり、もちもちした食感を楽しめる。
おこわは旬の食材を取り入れ、新緑の時季はタケノコ、秋はキノコを使うなどの月替わり。豚汁は具だくさんで煮物はやわらかい。どれも優しい味付けだ。
「家族に出している味そのままなんです」と店主の田所伸江(たどころのぶえ)さん(56)。41歳で教員を辞め、子育てに専念。昨年4月に長年の夢だった店を自宅隣に開いた。
父親が農作業に使っていた納屋を改装し、素朴な雰囲気が漂う。庭は子育ての傍ら、何年もこつこつと手入れしてきた。
鉄塔は、田所さんにとってこれまで良い印象はなかったが、今は店の目印として役立っている。鉄塔ファンも訪れる。
開店からもうすぐ1年。仕込みのため未明に起床する日々に、田所さんは「本当に大変」としみじみ語る。「お客さんの『おいしかったよ』の一言で頑張れます」と笑顔を浮かべた。
▼メモ 宇都宮市簗瀬町2540の6。午前11時半~午後2時、午後3~4時半。月、木、日曜定休。(問)090・7389・7274。