育児を経てJBA公認A級に合格した有坂さん(中央)=4日、日環アリーナ栃木

 その女性は40代となった今、再びコートに立つ。栃木県足利市、自営業有坂明子(ありさかあきこ)さんは出産、育児を経て30代からバスケットボールの審判に挑戦し、本年度の昇級審査会で全国規模の大会を担当できる日本協会(JBA)公認A級に合格した。本県の女性としては5人目の取得だが出産経験者の合格は初。有坂さんは「『結婚してもできる』ということが伝わるといい」と女性審判の普及への思いを口にする。8日はジェンダー平等や女性活躍推進などを目指して国連が定めた「国際女性デー」。

 JBA公認審判資格は地域の大会を担当できるE級からD、C、B、A、S級まで6階級ある。上級の審判には若くしてなるケースが多く、40代でのA級合格は極めて珍しい。

 有坂さんは小学5年で競技を始め、高校卒業後は社会人のクラブチームでプレー。20歳で結婚し3人の子宝に恵まれてからは育児に専念していた。転機は長男の中学進学とバスケットボール部への入部だった。

 競技経験があることを買われ、最初は手伝い程度で審判を始めたところC級の審査に合格。さらに長女が進学した白鴎大足利高の香山孝之(かやまたかゆき)監督から多くの助言を得てB級に受かった。

 中高生の関東大会などで実績を積み着実に腕を磨いた。当初はベンチから判定に異議を唱えられ「涙を流すこともあった」というが、負けず嫌いな性格と向上心でジャッジを続けた。

 本県協会所属の強化審判員として、本年度の審査会でA級に合格。「大きな体育館で笛を吹くことが夢だった」と喜びを口にし、年末の全国高校選手権でのジャッジを心待ちにする。

 世界では女性活躍の流れが進む一方、本県の女性審判の数は伸び悩む。強化審判員のうち女性はS級が1人、A級が有坂さんを含め2人、B級が4人で「他県と比べてもまだまだ少ない」。過去にはA級を取得しながら育児を理由に離れてしまったケースもあり、長く続けていくにはハードルが高いのが現状だ。

 県協会は年2回の女性講習会などで底辺拡大を図っているが、それに加えて「周囲の理解や協力も必要」と有坂さん。子連れでも審判ができる環境やサポートの必要性を強調する。

 今後はさらなる技術の向上に取り組むだけでなく後進の育成にも注力していく。目標の「信頼される審判」を目指し、“ママさんレフェリー”はきょうもコートを駆ける。