すしには欠かせない存在の「ガリ」、焼きそばに彩りを添える「紅ショウガ」-。食事の名脇役であるショウガの加工食品が、どこで作られているか考えたことはあるだろうか。

テイクアウトで持ち帰ったガリのパッケージ裏面を見ると「遠藤食品」と書いてあることがある。気になるその存在を追ってみた。
日本百名水の一つ「出流原弁天池」に近い佐野市の「出流原スマートインターチェンジ(IC)」から約10分。山に囲まれたのどかな風景の中に「遠藤食品」の本社はある。

同社は1961年、佐野市内でショウガの生産が豊富だったことや漬物業が盛んだったことなどを受け創業した。同社によると、国内ショウガ消費量の約25%を占め、国内ガリのシェアトップを誇るという。
ガリは、仕入れした塩漬けショウガを洗浄、脱塩し、従業員による目視検査を経て、スライスする。スライスしたショウガは、甘酢液とともに自動充填(じゅうてん)包装される。

大手チェーンなどに、それぞれの会社に合わせた味の商品を卸し、工場で生産する製品は約300種類にのぼる。同社の遠藤栄一(えんどうえいいち)社長(53)は「われわれはあくまで脇役。どこに卸しているのかは、相手先の企業秘密につながるので言えない」と口を固く閉ざすが、「うちの新ガリは職人が選ぶ味。歯応えと味はうちの商品が1番」と自信をのぞかせる。

工場では、原料受け入れから製品出荷までをマニュアル化し、それに沿った製品製造システムを確立。2000年に漬物業界で初めて、国際基準レベルの品質管理の仕組みで提供されている証となる「ISO9001」を認証取得した。18年には食品安全マネジメントに関する世界で最も水準の高い国際規格である「FSSC22000」も取得している。

同社が製造するのは、ガリや紅ショウガだけではない。白米に合うように開発された「おかずしょうが」や、有名駄菓子の「スモモちゃん」や「さくら大根」も主力商品の一つだ。インターネット限定でショウガのタブレットやカプセルなどの販売も行っている。

同社の研究室開発部の伊藤悠里(いとうゆり)さん(28)は「わが社のキャッチコピーである『“しょうが”を食卓に』を広めるとともに、若い世代を含む、多くの人にショウガの良さを広めたい」と話した。名脇役としてだけじゃない、ショウガの魅力が、本県から今も生み出され続けている。
