じょりんぼの店先に立つ星野解子さん

 文化芸術の発信拠点として地域住民に40年以上愛された栃木市富士見町の喫茶店「じょりんぼ」が、年内で営業を終了する。店主を務める市出身の版画家・彫刻家鈴木賢二(すずきけんじ)(1906~87年)の四女星野解子(ほしのときこ)さん(76)が自身の年齢などを考慮し、閉店を決めた。今後は併設のギャラリー運営に力を入れる考えで、「喫茶店での仕事は終わるが、芸術活動は続けたい」と話している。

 じょりんぼは1979年、片柳町1丁目の貸店舗で開店。絵本作家の原画展や地域住民らの音楽会を開き、交流の場としても親しまれた。星野さんも演劇活動などに関わり、「文化芸術団体の関係者らでにぎわった」という。

 2002年、富士見町の自宅に店を移転した。鈴木の作品を収蔵したギャラリーも併設し、保存作業にも当たった。「作品を見に来る人が喫茶店によく立ち寄ってくれた」と振り返る。

 新型コロナウイルスの影響を受け、2年前からは喫茶店としての営業を自粛し、弁当の販売に専念した。地元産米を使った手作り弁当は地域住民や会社員らから好評を博し、市独自のおもてなしグルメ「とちぎ江戸料理」にも指定された。

 開店から43年となった今年、70代後半を迎えた星野さんは「店の営業と作品の保存作業の両立は困難」と判断し、閉店を決意した。「これまで支えてくれた人に感謝」と頭を下げ、「展示会を来年開くことなどを見据えて、ギャラリーの仕事に力を入れたい」と抱負を語った。