病床使用率が50%を超えるなど、栃木県内で新型コロナウイルスの感染が再拡大している。自治医大付属病院感染制御部の森澤雄司(もりさわゆうじ)部長が5日までに下野新聞社の取材に応じ、「第8波のピークはまだ先」とし、医療体制急迫の危機感と共に、人出が増える年末年始に向けワクチン接種の積極的な検討を呼びかけた。注目されるインフルエンザとの同時流行は「先行きは見通せない」と指摘した。
病床使用率は11月28日に50.2%となり、3カ月ぶりに5割を超えた。同病院でも医療スタッフの感染が相次ぎ、森澤部長は「院内の医療体制は切迫してきており、一般診療に影響が出かねない」と危惧する。
「第8波」の感染者は、大半を40代以下が占める。「行動制限が求められておらず、ワクチン接種が鈍っているためではないか」と推察する。4回目ワクチンの接種率は、11月27日時点で50代の42.2%、65歳以上の82.4%に対し、40代26.2%、20代は13.8%と低い。「感染者が減る要素がない」と感染のピークは先との認識を示した。
鹿沼市では11月上旬、インフルエンザで学級休業した小学校が出たが、県内全体では流行の状況にはない。森澤部長は、あるウイルスに感染すると別のものには感染しにくい「ウイルス干渉」を挙げ、同時流行の生じにくさを指摘する。
ただ、国内では現在、乳幼児などに重症化リスクがある「RSウイルス感染症」が流行しており、米国ではインフルエンザとの「トリプルデミック」もみられるなど不確定要素が多い。
森澤部長は同時流行の可能性は捨てきれないとして「インフルエンザも含め積極的にワクチン接種を検討してほしい」と求めた。