トウガラシのプランターに応援メッセージ入りのステッカーを貼る鈴木さん=4日午前、大田原市親園

 草丈60センチほどに育ったトウガラシが赤く色づき始めた。4日午前、大田原市親園のビニールハウス。手塩にかける大田原園芸の鈴木篤則(すずきとくのり)さん(72)は「葉の緑をいかに残すか。赤と緑を最高の状態にして会場へ届けたい」と意気込んだ。

 とちぎ国体では市内で三つの正式競技が行われる。市実行委員会は「生産量日本一」を宣言した特産品に着目し、会場装飾にトウガラシを使うことを決めた。4会場へプランター各200基、計800基を飾り、選手団や観客を出迎える。

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 国内最大のスポーツの祭典。本県を訪れる競技関係者やその家族、観戦者らは数十万人になるとみられる。「わがまちをPRする絶好機」「心から歓迎し、地域の魅力も伝えたい」と、各市町は個性豊かなおもてなしに工夫を凝らす。

 同市の会場を彩るトウガラシの品種は、産地復活を目指して栽培に力を入れてきた「栃木三鷹(さんたか)」。2006年に発足した「大田原とうがらしの郷づくり推進協議会」の地道な活動で、トウガラシ料理の提供店も増えた。

 国体を機に見据えるのは、県外へのさらなる発信だ。同協議会の吉岡博美(よしおかひろみ)会長(73)は「トウガラシはパワーの源。ステップアップする一つのきっかけになれば」と、アスリートへのアピール効果に期待した。

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 各市町では、児童生徒が各都道府県選手団ごとにメッセージを書いた応援旗などを作成。県は観光地を巡るデジタルスタンプラリーのほか、「いちご一会花育て隊」を募り、会場周辺や街並みを花で飾る花いっぱい運動も展開してきた。

 本県の南の玄関口となる野木町。町は、ハンドボール競技の会場や駅周辺などに地元小中学生らが育てた花を飾りつける予定だ。

 国体の機運醸成に向けて、町は女の子のオリジナルキャラクター「RENCA(れんか)」を制作した。デザインは町民が考案し、国指定重要文化財「野木町煉瓦(れんが)窯」にちなんで名付けた。ポスターの掲示やシールの配布などでPRに努める。

 町教委生涯学習課国体推進係の川俣智英(かわまたともひで)さん(35)は「キャラクターを通じて、町と国体を身近に感じてほしい」と話す。町は、飲食店や観光スポットを紹介するパンフレットも作成した。「いい所だったと記憶に残してもらいたい」

 来県者との「いちご一会」の出会いは、一つ一つがレガシー(遺産)になる。大会成功へ向け、準備はラストスパートに入った。