握力の弱い右手にテーピングをしてラケットを握る大谷。シングルス、ダブルスともに金メダルを狙う=7月、佐賀市

 真っすぐな瞳は、自信に満ちている。「目標は、もちろん金メダル」。栃木市出身の大谷桃子(おおたにももこ)(25)=かんぽ生命=は、迷い無く言い切る。

 昨年、車いすテニスの四大大会「グランドスラム」の一つ、全仏オープンで準優勝した。「健常の時から憧れ」だった舞台。ほぼ無名の存在から一躍、メダル候補に名乗りを上げた。

 兄の影響で、小学3年からテニスを始めた。作新学院高3年時は、ダブルスで全国高校総体に出場した。

 「選手をサポートする側」を目指して専門学校に進んだ直後、右足にけいれんを発症。入退院を繰り返し、薬の副作用で下半身の自由を奪われた。

 自宅に引きこもるようになり、テニスからも1年以上離れた。転機は2016年。車いすテニスのトップ選手が集う大会「ジャパンオープン」を観戦した。真剣勝負を見て「やっぱりテニスが好きなんだ」。アスリートの心に再び火が付いた。

 高校までのテニス経験はあったが、甘くなかった。握力が弱まった右手ではラケットを握るのも難しい。車いすの操作「チェアワーク」は「日本一下手」と例えるほどうまくいかない。

 指導者が必要だと感じ、進学した西九州大のある佐賀県でコーチをしていた古賀雅博(こがまさひろ)さん(46)に直談判した。「やるからにはグランドスラム」。二人三脚で世界を目指した。

 東京パラリンピックの延期は「プラスに捉えた」。20年9月、全米オープンで四大大会に初出場。10月の全仏を経て「レベルアップが必要」と感じた。持ち前のスピンが効いたフォアハンド、多彩なサーブも磨き直した。

 「新しい展開も身に付いた」。今年7月のウィンブルドン選手権。サーブリターンなど早い段階でポイントを取る形が奏功し、世界ランキング2位の上地結衣(かみじゆい)(27)=三井住友銀行=に初勝利。東京へ弾みをつけた。

 今月16日時点で世界5位。車いすテニスを始めて5年で、日の丸を背負うまでになった。「これまで積み上げてきたものを、思い切り出したい」。もう一つの夢舞台で、グランドスラムを超える輝きを放つ。