上下水道料金の引き上げが続いている。県内25市町のうち、直近5年間で10市町が料金を上げ、5市町は値上げの予定がある。値上げ幅は約10~50%で、今後検討している宇都宮市も含めると、引き上げの傾向は少なくとも16市町に及ぶ。

 人口減少に伴い利用量が減少し収入が落ち込む一方、高度経済成長期を中心に整備が進んだ配水管や浄水場などの施設の維持、修繕の費用が増え続けていることが背景にある。受益者負担を考えれば値上げはやむを得ない半面、水道事業の運営コスト削減に一層努めるべきだ。

 橋や道路などと違わず、水道インフラも老朽化に伴う問題が顕在化している。埼玉県八潮市で今年1月、下水道管が破損した影響で県道が陥没しトラックが転落した事故は記憶に新しい。県内でも日光市内で6月、水道管の破損により水が高さ10メートルまで噴き上がり、鹿沼市では7月、下水道管が破損し汚水があふれ出す事態が起きている。

 管路の法定耐用年数は水道管で40年、下水道管で50年とされる。国土交通省によると、2022年度時点で全国の水道管全延長の23・6%が耐用年数を超えている。年1・18%ずつの管路の更新が必要とされるが、県平均は0・40%(23年度)と下回っている。費用面などから着手しづらい現状があるという。

 各市町も手をこまねいているわけではない。宇都宮市は人工衛星を使った水道管路の漏水調査や下水道管点検にドローンを取り入れ、事業日数短縮による経費削減を図っている。それでも管路や施設の更新費用の捻出には程遠い。

 国の方針に沿って県は23年3月、「県水道広域化推進プラン」を策定し、事業統合をはじめ経営の一体化、業務の共同化など大きく三つのパターンを想定した取り組みを推進している。最大で県北、県央、県南の三つの圏域ごとの事業体にまとめることを目指しているが、現実には市町の一部で浄水に使用する薬品の共同購入を検討している段階にとどまっている。

 経費の削減だけを考えれば広域化が望ましい。しかし仮に一つの浄水場が自然災害などで被災し、甚大な影響が生じる可能性も否定できない。経営の効率化を進めながら、長期的な視点に立った水道インフラの在り方を議論する必要があるだろう。