百日ぜきは、百日ぜき菌の感染で起こります。コンコンと激しくせき込んだ後、笛を吹くようなヒューという音で息を吸う、この苦しい咳嗽(がいそう)発作が日に何度も繰り返されます。この激しいせきが3カ月も続くことがあり、強い感染力で小児を中心に患者が発生します。

 

 学校保健安全法では感染期間のせきが出始めてから4週目位まで、特有のせきが消失するまで出校停止です。一方、マクロライド系抗菌剤の5日間の服用で感染力が著しく低下するので、抗菌剤服用中は登園、登校を控え、その後には登校可能となります。

 潜伏期間(7~10日)の後の風邪のような症状から、次第にせきの回数が増えてくるカタル期の段階で、適切な抗菌剤治療が開始されれば重症化を防げる可能性があります。また、発作性のけいれん性のせきとなる痙咳期に適切な抗菌剤の治療が行われれば、周りへ感染力を弱める効果が期待できます。

 しかし、近年では従来から百日ぜきの治療に用いられていたマクロライド系抗菌薬が効きにくい耐性の百日ぜき菌が出現、日本でも耐性菌の検出が増えていることから、重症化しやすく犠牲者の多くを占める乳児、特に生後6カ月未満児へ感染防止が重要です。

 百日ぜきは、患者の鼻水や唾液の飛沫(ひまつ)感染や手を介した接触感染で、全ての年齢層で感染します。乳幼児期の定期接種の百日ぜきのワクチン免疫は数年(4~12年)で減衰してしまうので、青年・成人の百日ぜきの感染・発症が増えています。大人がせきをしながら、ハイリスクの赤ちゃんに感染させてしまうことがあるのです。

 そのため、子どもの頃に受けた3種混合ワクチン(百日ぜき・ジフテリア・破傷風)の大人向け追加接種することが勧められます。

 米国では妊婦に大人用の3種混合ワクチンを妊娠後半に接種し、生まれてきた赤ちゃんにワクチンの百日ぜきの免疫を移行抗体として与えます。百日ぜきは過去に一度感染しても、再感染することがあります。日本でも百日ぜきが流行する今、妊婦や育児に関わる人やその家族に追加接種が勧められます。

岡田晴恵教授
岡田晴恵教授

 

おかだ・はるえ  医学博士。専門は感染免疫学、公衆衛生学。テレビやラジオへの出演や執筆活動を通じて、感染症対策の情報を発信している。