◎今週の一推しイベント
【27日(月)】
▽「SOCIAL INNOVATION WEEK(SIW) 2025」(~11月3日、渋谷ストリーム、渋谷サクラステージ、渋谷区役所本庁舎ほか、入場無料)
渋谷から新たな文化・産業を創り出すことを目的にした都市フェスティバルが始まる。
産業や教育、文化についてトークセッション、ワークショップなど約100種のイベントを1週間にわたり実施。より良い社会の実現を目指すためのヒントを、参加者に発見してもらう場だ。8回目となる今年のテーマは「毎日に、好奇心を。未来に、アイデアを」。
主宰の金山淳吾さんはSIWの前身となる2017年のイベントからプロデュースに関わってきた。「ほぼ同時期に渋谷で始まったLGBTQの祭典プライドパレードがテーマを絞る一方、SIWはエンタメから防災、デジタル技術まで幅広い問題を扱い、解決策を議論している。多様性の時代、誰もが“当事者”としてとけ込めるイベントの間口をさらに広げていきたい」と話す。
再開発が進む渋谷だが、“文化を生む装置”としての歴史と資産を守り、エンターテインメント産業を発展させていきたいという。29日には、元放送作家で起業家の鈴木おさむさんらと共に登壇。エンタメ産業を進化させるため、10の視点から討議する。「渋谷で生まれたカルチャーは、個々の好奇心から発信され、大きなビジネスに育ったものが多い。コンテンツ事業者たちが、新たなビジネスフェーズへ移行できるアイデアを提供したい」
生成AIの技術革新が音楽業界に大きな影響を与えている現象にも注目。DJのD☆(アキュートアクセント付きE) D☆(アキュートアクセント付きE) MOUSE(デデマウス)さんがロボットと対談する30日のイベントも注目だ。「渋谷は若者の街と呼ばれるが、40~60代の人たちにも好奇心を持って参加してほしい。長年のキャリアで蓄積された経験は、未来のイノベーションを起こす可能性に満ちている」
○そのほかのお薦めイベント
【18日(月)】
▽「井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s―1980s」(~11月3日、渋谷区)
書を独創的な芸術に昇華させ、前衛美術やグラフィックデザインの分野でも高く評価された書家、井上有一(1916~85年)の展覧会が、渋谷区立松濤美術館で開かれている。
小学校教員として働きながら50年代から書家として活動。精いっぱいに日常を生きる庶民の視点で描いた、エネルギーに満ちたダイナミックな書体が特徴だ。モノクロの紙と墨による世界が、素朴に大胆に躍動する。
学芸員の木原天彦さんは「旧来の書壇から距離を置き、誰でも芸術家になれるという考えを持っていた。『貧』などの代表作には、彼自身の生活感と反骨精神がよく表れている」と話す。
画面下に新聞紙が貼り継がれた「死」(57年)は、字の一部が新聞にはみ出しており、それも含めて作品となっている。床の上に新聞紙を敷き和紙を置いて、はいつくばるように制作していた姿が目に浮かぶようだ。枠にとらわれずに、自由を求める気持ちが伝わってくる。
80年代、その独特な書体に反応したのがグラフィックデザイナーの浅葉克己さんやコピーライターの糸井重里さんらだ。商業主義とは程遠い書家の作品が、セゾングループの広告などで盛んに取り上げられるという特異なブームが起きる。十数年前の遺作「貧」の一字を立ち上がらせたパルコのポスターには、糸井さんのコピーが一億総中流と呼ばれた80年代の空気を漂わせた。
もし井上が生きていたら、このような現象をどう思っただろうか。木原さんは「純粋な芸術としての作品、渋谷文化を体現するポスターの両方から井上の“書”の可能性を感じ取ってほしい」と投げかけた。
▽「ケイタマルヤマ“オモタセ”プロジェクト」(~28日、千代田区)
ファッションブランド「ケイタマルヤマ」のテキスタイル模様を施したクッキー缶に入ったスイーツが、有楽町マルイで販売されている。
お土産を受け取った側が使う敬語「おもたせ」をテーマにした期間限定イベント。ブランドのアーカイブから厳選した美しい柄の数々を採用し、クッキー缶に“相手を思いやる心”を表現した。
秋冬限定の詰め合わせクッキー缶「バタフライ」は、チョウたちが優雅に飛び交う色とりどりの柄を楽しめる。中には、栗のおいしさを生かしたクッキーがずらり。ケイタマルヤマを代表する花鳥柄をあしらった「オリエンタルフラワー」デザインのクッキー缶も。レモン風味のバタークッキーなど全8種を詰めた。贈られる人だけでなく、贈る人も喜びを感じられるだろう。
▽「京伝小紋TEXTILE展」(~11月5日、新宿区など)
セレクトショップ「ビームス ジャパン」が、浮世絵師・戯作者の山東京伝の小紋柄を生かしたウエアとグッズを、新宿や渋谷の各店舗で期間限定販売している。
日本各地のテキスタイル産地で、京伝の小紋柄を復元して生地にプリント。その生地を使い、現代のライフスタイルに合わせたスカーフやトートバッグなどを製作した。
ソックスには、「猫の目」「山水てんぐ」「かげうさぎ」の伝統的な京伝小紋柄を、細やかな編み立て技術で忠実に再現。フロントに小紋柄をプリントしたTシャツも展開している。浮世絵師のユーモアやパロディー精神を随所に感じられるアイテムが勢ぞろいだ。