本県ゆかりのアーティストが「発表の場」として利用できる施設情報などをまとめた「とちぎアーティストスポットバンク」を県が本年度設置した。さまざまな芸術家の文化活動や他分野との連携促進が目的だが、登録数は伸び悩む。アーティストの活動の場だけでなく、県民が文化芸術を身近に感じる機会の増加にもつながる事業である。登録の意義を周知する努力を続けてほしい。
スポットバンクは、本県ゆかりのアーティスト情報をまとめるために県が開設したウェブサイト「とちぎアーティストバンク」と連動した活用を目指し設置した。アーティストバンクには、8月末現在で芸術や伝統芸能など8ジャンルに計251の個人・団体が登録する。出演や制作を依頼する民間団体などとつなぐことが目的だが、活用実績はわずか11件。大半は事務局として運営するとちぎ未来づくり財団や行政の主催だ。
アーティストの活動の場が広がるよう、飲食店など地域の身近な場所がアーティストスポットとして連携できれば、文化芸術活動の枠にとどまらない地域振興の活性化にも役立つだろう。
そのためにはスポットバンクへの登録数増が必須だが、事業開始から半年近くたっても24件にとどまる。募集チラシや県ホームページでの説明はアーティストバンクのサイトと比べて簡素で、登録の意義は分かりづらい。県民への周知も十分とはいえない。
全国の好例では、2024年にアーティストバンクとスポットバンクが一体のサイト「POART(ポート)」を開設した大分市が挙げられる。充実した機能とビジュアルで計325の個人・団体のアーティストが登録、スポットバンクは公共施設を含め128件に上る。アーティストと事業者のマッチング機能を設け、成立したイベントを紹介するなど登録のメリットを分かりやすく発信した結果、民間事業者との活用実績は本年度だけで100件を超える。
本県もスポットバンク紹介の工夫やアーティストとの交流会など、民間事業者が登録したいと思える手法を取り入れ、登録数を増やす努力が求められる。アーティストスポットは、日常的な場でアーティストや作品との距離を縮められる点に意義がある。その魅力を県民に積極的に発信し、価値ある事業に育てたい。