白鴎大の佐藤(2024年12月のインカレ準決勝より)

 バスケットボールBリーグB1の広島は17日、白鴎大の佐藤涼成(さとうりょうせい)(22)と2025-26年シーズンの契約に合意したと発表した。特別指定選手のプロ契約。Bリーグシーズン開幕直前、白鴎大も「インカレ」を控える異例のタイミングでの契約合意となった。

 佐藤は175センチ、86キロのポイントガード。岩手県出身で、福岡第一高から白鴎大に進学した。大学では2年時の23年の全日本選手権(インカレ)で優勝に貢献し、優秀選手に選ばれた。Bリーグでは24-25年シーズンに横浜の特別指定選手としてプレー。U22日本代表歴もあるなど、世代を代表する選手として知られ、Bリーグで26年に始まるドラフトでも指名が有力視されていた。

 白鴎大は現在リーグ戦の最中で、インカレも冬に控える中、チームの大黒柱を失うこととなった。白鴎大男子の監督で、ブレックスのアンバサダーなども務める網野友雄(あみのともお)氏は、自身のXで異例の契約の内幕や胸の内を明かした。

 網野氏がXで公開した全文は以下の通り。

◇   ◇

 日頃より、白鴎大学男子バスケットボール部を応援していただきありがとうございます。

 このたび、本学の佐藤涼成が広島ドラゴンフライズへ移籍することとなりました。

 佐藤は本学にとって非常に大切な選手ですので、今回の経緯と私自身の思いをお伝えさせていただきます。

 8月上旬、本人から「自身のスキルアップのためにBリーグに挑戦したい」その意思表示がありました。

 この時点では、私のもとには特定のクラブからのオファーはなく、純粋に「もっと上手くなりたい」「厳しい環境に身を置きたい」という強い意志が伝わってきました。

 ただ、会話を重ねる中で、ドラフト制度によって自分でチームを選べないことも、多分少なりとも影響しているのではないかと感じました。

 私からは、挑戦したいという気持ちを尊重しながらも、「4年生のキャプテンとして残りの数ケ月をやり切り、チームを勝たせるガードになってからプロを目指す方が、長い目で見た時に彼にとって良いのではないか」と助言しました。

 なぜなら、私はその方がよりチャレンジングであり、価値のある成長につながると考えていたからです。

 私は、佐藤には「どこにいても所属チームを強くできる選手」になってほしいという思いを常に持っていました。

 8月は代表活動やAUBL(アジア大学バスケットボールリーグ)の大会も重なり、この件だけに集中することはできませんでしたが、何度も本人と話し合いを重ねました。

 その中で、AUBL期間中に再度、「Bリーグに挑戦したい。可能であれば広島ドラゴンフライズでプレーしたい」という意思が示されたため、最終的にはその強い思いを尊重する決断をしました。

 この時点でも、私のもとに特定クラブからの打診はなく、ドラフトを回避して移籍を実現するためには、Bリーグの開幕前(10月3日)までに25-26シーズンの契約を結ぶ必要がありました。

 そのため、多くのクラブと十分な交渉の時間もなく、本人の意思を第一に考え、広島ドラゴンフライズにコンタクトを取らせていただきました。

 突然の連絡に、朝山HCや岡崎GMも戸惑われていた様子でした。

 「選んでくれたのは嬉しいが、それが本当に本人にとって最善の選択なのかは分からない」という率直なご意見もいただきました。

 本学の経営陣とも協議を重ね、佐藤の選択を尊重できる状況を整えることが、引き継いでいただくクラブへの配慮にもなると判断しました。

 そのため、交渉段階に進むまでに少し時間を要することとなりました。

 大学リーグの開幕以降、佐藤がチームに帯同していなかったことで、日頃より応援してくださっている皆様にはご心配をおかけしました。この場を借りて心よりお詫び申し上げます。同時にこのような事情があったことをご理解いただけますと幸いです。

 

 正直なところ、リーグ開幕直前にこの決断をチームに伝えるのは、指導者としても非常に心苦しいものでした。

 しかし、本人の意志の強さと将来を考え、受け入れるべきだと判断しました。このことをチーム内で共有した際、選手たちはそれを素直に受け入れ、佐藤を応援しながら、自分たちも新たなチャレンジに向かう決意を固めてくれました。そんな彼らの姿勢を、私はとても誇らしく感じました。

 

 最後に、広島ドラゴンフライイズの関係者の皆様へお願い申し上げます。

 佐藤は、本学において1年生の頃から試合に出場し、3年半の時間をかけて中心選手として育ててきた選手です。

 大学リーグ開幕のわずか2日前に、キャプテンであるPGがチームを離れることが、チーム作りに大きな影響を及ぼすことは、容易に想像いただけるかと思います。

 「ここからが、大学で最も成果を出せる時期だ」と感じていた反面、「Bリーグでも活躍できる」と自他ともに感じられる選手を育てることができたといえたらう事実に、私自身納得し、送り出したいと思っています。

 チーム関係者の皆様には、ぜひ厳しくも温かいご指導をお願い申し上げます。本人の努力次第ではありますが、きっと大きく成長してくれると信じています。

 そして、ファンの皆様、どうか引き続き佐藤涼成へのご声援をよろしくお願いいたします。

 

 「涼成、頑張れ!」

 

 我々白鴎大学男子バスケットボール部は、どのような状況においても前を向き、コートの上で戦い続けます。

 必ず良いチームをつくりますので、引き続きご声援をよろしくお願いいたします。

◇    ◇

 佐藤涼成が広島を通じて発表したコメントは以下の通り。

 皆様はじめまして!

 広島ドラゴンフライズに入団することとなりました、佐藤涼成です。まず初めに、このような機会を与えて下さったクラブならびに関係者の皆様に感謝申し上げます。そして何よりも、この決断を前向き受け入れてくれた白鴎大学と網野さんに本当に感謝しています。網野さんの元で人間として、またバスケットボール選手として成長させてくださったこと、一緒にプレイできたことを誇りに思います。この恩を忘れずに日々努力して、恩返しできるように全力で頑張りたいと思っています。

 

 Bリーグに早く挑戦したいという気持ちは強く、プロ選手になることは小さい頃からの夢でもありました。選手として優勝経験のある朝山HCの元で色々学びたいという想いと、自分のプレースタイル、そして持ち味を十分に発揮できると思い広島ドラゴンフライズへの加入決断に辿り着きました。ここからが本当のスタートだと思いますし、Bリーグのトッププレイヤーの一人になるためにも、今まで以上に努力を積み重ね、出来ること以上の力を発揮できるよう全てを賭けます。

 

 皆様、応援のほどよろしくお願いします!