佐野市は11月、市内のみで使えるデジタル地域通貨「さのまるペイ」を導入する。加盟店で使えるプレミアム商品券をデジタル化して発行し、経済の好循環につなげる考えだ。県内市町では初の導入という。
この事業を一過性のものとせず、持続可能な取り組みとして定着させることができれば、地域活性化の一助になるだろう。市は市民の理解促進を図り、事業を軌道に乗せたい。
地域通貨とは、特定の地域やコミュニティーでの利用を目的とし、自治体や企業が独自に発行する。県内では自治体が紙の「プレミアム商品券」を交付する方式が主流だが、加盟店や金融機関は商品券の換金に多くの事務負担を強いられてきた。金額の単位は千円の場合が多く、少額の取引もできなかった。
市が導入する「さのまるペイ」は、スマートフォンのアプリか専用カードのどちらかに現金を蓄えると、その額に応じてポイントが付与される。1ポイント(円)単位での取引も可能。アプリの場合、仮に1万円を蓄えると1万3千円分を利用できる。国の交付金を活用することにより、財政負担はほぼないという。
デジタル化により換金事務の負担が軽減されるとして、紙で発行した昨年度に比べ発行額を2億2600万円増額し、総額5億5100万円とした。利用期間を来年2月末までの約4カ月間に限定しており、消費喚起の有効な機会となるに違いない。
一方、地域通貨はこれまで全国各地で導入されてきたが、長続きしないケースも多い。利便性では大手企業の電子決済サービスに対抗できないのも事実だ。定着には地元振興のツールとしての位置づけを明確化し、大手にはまねのできない地域色豊かな付加価値を設けられるかだろう。
市は来年度以降、補助金給付やふるさと納税での活用、イベントでのポイント付与などのサービス展開を想定する。商店街によるイベントでの活用など民間への広がりも期待している。
何より成功の鍵を握るのは、市民の愛着心を育むことにあるのではないか。地域通貨を媒介することで、郷土の自然や文化の保全といった地域貢献にも寄与できる仕組みを構築すれば、市民の賛同を得られるはずだ。あらゆる角度から知恵を絞りたい。