参院選は20日、投票日を迎える。国際秩序や自由貿易体制が崩壊の危機にさらされる世界。物価高騰に苦しみ、人口減少・少子高齢化という「縮む社会」が一段と進行する日本。この国の未来をどこに、誰に託すのか。課題が山積する中での1票だ。

 今回の参院選は、いつもと様相を異にする。昨年の衆院選で自民、公明が少数与党に転落、野党の協力がなければ、予算も法案も成立しなくなった。参院でも与党の過半数割れとなれば、政権交代、あるいは政権の枠組み変更という可能性を秘める。

 まさに事実上の「政権選択」選挙である。政治が変わるかもしれない転換点に立っている。その意義をかみしめ、政治に何を望むのかを考え、それぞれが判断してほしい。

 栃木選挙区(改選数1)には、参政党新人大森紀明(おおもりのりあき)氏(54)、立憲民主党新人板津由華(いたづゆか)氏(37)、自民党現職高橋克法(たかはしかつのり)氏(67)=公明党推薦、共産党新人福田道夫(ふくだみちお)氏(66)、政治団体「NHK党」新人高橋真佐子(たかはしまさこ)氏(60)、無所属新人笠間信一郎(かさましんいちろう)氏(76)の6人が立候補している。

 今回は物価高対策と消費税減税の是非、コメ問題、選択的夫婦別姓制度など、有権者にとって身近で今日的な課題が大きな争点である。

 もう一度、各候補者、政党のホームページや選挙公報を開き、発表された公約を見てみよう。自身の感性に照らして1票を投じる先を決めてもいい。政治に参画する意味を再認識してほしい。

 本県の投票率は2019年の前々回が44・14%、前回22年は46・98%で、それぞれ過去2、3番目に低かった。一方、改選定数が2から1に減少した07年と10年は56%台だった。自民党から旧民主党へ政権交代した前後でもあり、有権者の政治への関心も高まったためとみられる。

 今回はどうか。16日までの13日間の期日前投票者数は23万8977人で、有権者全体の14・94%。1日当たりの投票者数を単純比較すると前回より2割ほど増えている。投票日が3連休の中日であることが増加の一因とみられる。

 若い世代の投票率の低さが指摘されて久しい。ただ、選挙戦は交流サイト(SNS)が主役になった。政党や候補者の政策や発言、それに対する評価、反論など、政治に関わる情報に接することが飛躍的に増えたはずだ。それを踏まえて行動に移せば、政治の風景は大きく変わる。

 今年は選挙権が18歳以上に引き下げられてちょうど10年である。昨年秋の衆院選の本県小選挙区の投票率は50・24%なのに対し、10代は35・40%、20代前半25・44%、20代後半34・58%と、若者の不振が際立つ。もともと、この世代は人口が少ない上、投票率が低ければ、国の将来を担う人たちの声が政治の場に届きにくくなる。その危うさを自問自答してほしい。

 多くの有権者が自分たちの権利の上に眠ってしまえば、「単に民主政治を弱めるだけでなく、実にその生命を脅かす」。戦後直後に作成された中高校生向けの教科書「民主主義」はこう教える。

 投票率が50%前後という「2分の1民主主義」と決別しよう。自らの意思を込めて投票してほしい。この国の未来を決めるのは、あなたなのだから。