20日投開票の参院選を前に、全国で政治家による事実に基づかない発言や、交流サイト(SNS)上での真偽不明の情報の拡散などが相次いでいる。不正確な情報によって選挙結果が左右されるようなことがあれば、民主政治の基盤が揺らぐ。

 事態を防ぐ対策として、メディアによる「ファクトチェック」(事実の確認)が強く求められている。明確な根拠を基に情報の真偽を検証し、正確な情報を共有する取り組みだ。下野新聞では参院選に合わせ、選挙報道の在り方などに関する新たな指針をまとめ、柱の一つにファクトチェックを据えた。

 街頭演説で偽・誤情報があったり、SNS上で不確かな情報が拡散されたりしていれば、本紙記者が検証に当たる。正確で信頼される情報を読者に届ける新聞の責務や使命の重さを改めてかみしめ、真実の追求に努めていく。

 昨年11月の兵庫県知事選では、SNS上などでデマや真偽不明の情報があたかも事実であるかのように拡散され、選挙結果にも影響したとされる。これが契機となり、全国紙や地方紙、放送局が6月以降、偽情報などの検証を行う方針を次々に表明している。報道機関がファクトチェックに本格的に取りかかる元年になる。

 参院選の一大争点として、外国人との共生の在り方が浮上しているが、SNS上では「外国人の犯罪が増えている」などの投稿が広がる。しかし警察庁などによると、日本に住む外国人の摘発件数は2023年に微増したものの、22年までは減少傾向。日本人も含めた摘発人数に占める割合は10年ほど前から2%前後で推移し、大きな変化はない。検証を重ねていきたい。

 さくら市出身でネット上の言論に詳しい成蹊大の伊藤昌亮(いとうまさあき)教授はメディアに「批判を恐れず報道する姿勢が必要だ」と注文を付ける。一方、「情報があふれる中では自分が信じたいものを信じる傾向がある。ファクトを追求して報じるメディアとの断層をいかに埋められるか」とも指摘する。

 本紙を含むメディアは覚悟を持ってファクトチェックに取り組まなければならないし、有権者側も正確な情報を見極める情報リテラシーが求められる。健全な民主主義を支えるため、それぞれが責務を負っている。