文化審議会は20日、原爆ドーム(広島市)を特別史跡に指定するよう文部科学相に答申した。戦後80年を迎える中、「被爆遺構の中で象徴的存在」と評価し、保護を強化する必要があると判断した。明治時代以降の遺跡が特別史跡に指定されるのは初めて。他に戦国時代に加賀国支配を巡る攻防が繰り広げられた「大聖寺城跡」(石川県加賀市)など6件の史跡指定も求めた。
原爆ドームは1915年に建てられ、ドーム部分に鉄骨を用いたれんがと鉄筋コンクリート造りの3階建てで、正面中央階段室が5階建ての構造。33年に「広島県産業奨励館」と改称された。米軍が45年8月6日に投下した原爆の爆心地から北西約160メートルに位置し、建物内にいた約30人は全員即死したが、奇跡的に倒壊を免れた。
95年に国史跡に指定、96年には世界文化遺産に登録された。広島市は今年3月、特別史跡指定に向け、保存整備に関する報告書をまとめていた。文化審は「人類史上初めて投下された原爆の惨禍を示す」と指摘した。
栃木県関係では「下野薬師寺跡」(下野市)の外郭施設である掘立(ほったて)柱塀跡が史跡の追加指定となる。
追加指定されるのは、7世紀末ごろに建立された日本三戒壇の一つである下野薬師寺跡指定地の南東端に接する約1290平方メートル。約30メートル間に12本分の柱跡が確認されている。
同寺跡南西側の約200メートルの掘立柱塀跡は生け垣として整備されている。市文化財課は「同じように復元できれば寺の範囲を可視化でき、観光資源としての活用につながる」と期待する。