◎今週の一推しイベント
【27日(金)】
▽「ザ・カブキ」(~29日、渋谷区・新国立劇場)
東京バレエ団が、振り付けの巨匠モーリス・ベジャールの「ザ・カブキ」を初台で上演する。
同バレエ団のために制作され、1986年の初演以来、国内外で多くの観客を魅了してきた演目。歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」を題材に、現代に生きる青年が元禄時代の世界に迷い込み、“由良之助”として主君のかたき討ちを果たすまでを描く。
初日は、由良之助をプリンシパルの柄本弾さんが務め、その主君で浅野内匠頭をモデルにした塩冶判官の妻、顔世御前の役をゲスト・プリンシパルの上野水香さんが演じる。
男性ダンサー中心の舞台で、物語の要となる女性を長年演じてきた上野さん。「ベジャールは日本の文学や哲学に精通していた。振り付けの端々に、この国の文化や精神への理解を感じる。欧州バレエの伝統を土台としながら、日本舞踊などから着想を得た、東洋的な動きの美しさや繊細さが見られる作品だ」と語る。
観音のイメージで振り付けられた役柄。悲しい運命を背負いながら、最後は夫のあだをとってもらいたいという自身の意思を強く打ち出す。「出番は少ないが、最大のヤマ場である男性ダンサーたちの群舞による討ち入り場面へとつなげる人物。孤独だが芯のある女性の姿は、日本人の踊り手だからこそ表現できる」
生前のベジャールに不朽の傑作「ボレロ」を踊ることを許された、世界でも数少ない一人。一昨年には紫綬褒章を受章した。「身体の限界への挑戦や、孤独との闘いは常にあるが、120%の力で踊ることで観客に勇気と喜びを与えられるのであれば本望だ」
○そのほかのお薦めイベント
【21日(土)】
▽「NAZE KAWARU MONO KAWARANAI MONO」(~29日、港区・アニエスベー ギャラリー ブティック、入場無料)
グラフィティ文化をベースにしたインスタレーションなどで知られる現代アーティスト、NAZE(ナゼ)さんの個展が、青山で開かれている。スプレーとコラージュを使って制作したペインティングや、廃棄物や布を基にしたオブジェなど、新作を含む約100点を展示。
壁一面に広がる段ボールの大型インスタレーションは、空想上の動物や女性、目のある樹木、海を鮮やかに描いた。個展タイトルの「変わるもの、変わらないもの」を表現したという。「変化の激しい時代でも、生まれ育った茨城・神栖での体験や母の故郷フィリピンの風景など、子どもの頃の思い出は変わらず創造の源になっている」とNAZEさんは話す。
床には道ばたで拾った空き缶や廃木、石ころなどを使った色とりどりのオブジェを置いた。遊び心にあふれたアートが、会場全体にワクワクするような空気を与えている。「ハーフの自分は学校で友達の輪に入れなかった。ハブられるたびに“なぜ?”と考え、うつむいて下校しながら、道ばたの廃棄物を自分に重ねた。踏みつけられたボトルや空き缶に、逆境を跳ね返す“輝き”を見つけることができた」と創作活動の背景を語る。
今回はギャラリーとの共同作業。アニエスベーが衣服制作に使った数々のサンプル生地をつぎはぎし、展示を仕切る壁を作成。捨てられてしまう布を、色彩豊かな大型作品としてよみがえらせた。「マニラの街にある廃材をつなぎ合わせたカラフルな家から発想を得た。太陽のように明るい母に励まされてきた自分も、アートという宝物を通して見る人の心に寄り添いたい」
▽「KIHACHIのメロンパイ~イバラキングスペシャル~」(~7月15日、港区)
茨城県産メロン“イバラキング”を使用した夏限定スイーツが、キハチ(KIHACHI)青山本店で販売されている。
キハチの名物ナポレオンパイを同メロンでアレンジした「KIHACHIのメロンパイ~イバラキングスペシャル~」を提供。果肉に特製ディプロマットクリームとクレーム・シャンティを合わせてパイ生地でサンド、果物の上品な甘さを引き立てた。期間中は、イバラキングを取り入れたスイーツでアフタヌーンティーも楽しめる。
【27日(金)】
▽「吉田恵里香さん講演会 社会のどこへもスポットライトを~物語で綴る『多様な存在』~」(19時、港区立男女平等参画センター・リーブラホール、事前予約制、入場無料)
NHK連続テレビ小説「虎に翼」の脚本で知られる吉田恵里香さんが、多様性をテーマにした講演会を芝浦で行う。
「虎に翼」では日本初の女性弁護士の一人、三淵嘉子をモデルに。ドラマ「恋せぬふたり」には性的欲求や恋愛感情を抱かないアセクシュアルの男女を登場させた。多様な人々を描く創作の理由について語る。
【28日(土)】
▽「MATSURI JAPAN 2025」(~29日、品川区・TAKANAWA GATEWAY Convention Center)
高輪ゲートウェイ駅周辺で進む大規模再開発計画「高輪ゲートウェイシティ」の街開きを祝い、各地の祭りを集めたイベントが2日にわたり開催される。
主催はレストラン・結婚式場の八芳園。北海道、長崎(28日)岐阜(29日)山形、福島、東京(両日)の“祭りパフォーマー”たちが、迫力ある踊りや演技を繰り広げる。踊り手らの地元の酒や、八芳園シェフによる郷土料理も提供。縁日エリアでは親子でヨーヨーすくいやダーツを楽しめる。日本の祭りの多様な魅力に触れる機会となるだろう。