「北冠」(北関酒造、栃木市) 6年ぶり金賞で感無量

 鈴木誠人社長は就任から5年。「新型コロナウイルス禍を挟んで金賞を取れなかった時期が長かった。社長になって初めての金賞なので大変うれしい。感無量です」。コロナ禍の悪夢を断ち切る朗報として喜んだ。

 出品酒を決めるために参考にする、3月の県吟醸酒研究会ではトップを取った。しかし、上吉原正人杜氏は「全国新酒鑑評会の審査に(酒質の)ピークを持って行くのが難しかった」とし、その度に醸造用アルコールや酵母を変えるなど迷い、苦闘した。「正直、この間は何か狂っているぞと思っていた。(苦闘が)金賞に結び付き、本当にうれしい」と安堵(あんど)した。

 鈴木社長は「栃木県でもインバウンドが増える中、栃木県の酒蔵が注目されるようになった。当社としても国内外に金賞受賞を発信していきたい」と力を込める。

「十一正宗」(森戸酒造、矢板市)力の結集が実を結びうれしい

 森戸酒造は、社長含めて4人で醸す小規模の蔵。大橋正典杜氏は「4人の最大限の力を結集した結果が、このように実を結んでくれて非常にうれしい」と受賞を喜ぶ。

 味をきちんと乗せることができ、香りも出て、キレもいい、全てのバランスが良いものが金賞に値すると考えているという。

 今回は比較的良質な兵庫県産の山田錦が入手できたが、洗米し始めると割れる米があった。

 「これは難儀するなと思った。米が堅くて溶けにくいという情報もあった。味が出にくい可能性があると思い、水を加えるのを慎重に行ったことがよかった」と振り返る。

 金賞受賞酒に人気が集まるのが一番。そして「当蔵の酒に興味を持っていただき、レギュラー酒でもいいので手に取ってもらえばうれしい」と広がりも期待した。

「惣誉」(惣誉酒造、市貝町)求める酒造り続ける

 2000酒造年度以降、19回目の金賞となった。河野遵社長は「蔵人の努力が報われた。求める酒造りを地道に続けていく」と語る。

 兵庫県産の山田錦を35%まで自社で磨いた。他の蔵元と同様、酒米が硬いという悪条件に直面したが、コメに水分を含ませて柔らかくしつつ、仕込みの水分量を減らして“味の濃さ”を保った。香り高く柔らかな味わいを実現したという。

 河野社長は鑑評会の意義を「今、金賞が取れそうな酒を造ろうと全国の蔵元が努力することで、技術の研さんにつながる」と捉える。金賞については「間違った酒造りをしていないという確認ができる」と、静かに受け止めた。

 秋田徹杜氏は「金賞が取れてほっとした」と胸をなで下ろす。新たな課題も発見したという今回の鑑評会。「さらに技術を改良していきたい」と意気込んだ。