2024酒造年度(24年7月~25年6月)に製造された清酒の出来栄えを審査する全国新酒鑑評会の結果が21日に発表され、本県からは15蔵元の15点が入賞し、このうち9点が特に優れた「金賞」に選ばれた。金賞を受賞した蔵元関係者に話を聞いた。
「七水」(虎屋本店、宇都宮市)精米歩合55%で挑み見事受賞

「心躍る酒」をコンセプトに、それを支えるものとして「チャレンジ&チェンジ」を掲げて酒造りに取り組んでいるという。
今回は兵庫県産の愛山を精米歩合55%で醸した。全国新酒鑑評会は、酒米の王様といわれる兵庫県産山田錦を30%台まで磨く大吟醸造りが王道とされる。小堀敦営業部長は「挑戦しての金賞受賞だけに感無量です」と喜ぶ。
これまで栃木県産オリジナル酒米の夢ささらで金賞を3回獲得し、うち2回は精米歩合50%だった。その経験が生きた。天満屋徳杜氏は「次のステージにいきたいと思った。愛山の55%は出来がよく、期待してはいたが、本当に金賞に入ったと聞いた時には鳥肌が立ちました」。
小堀部長は「大吟醸より購入しやすい価格になる。今後も皆さんに飲んでいただきやすい商品づくりに励みたい」と笑顔をみせた。
「澤姫」(井上清吉商店、宇都宮市)香りを抑え、より飲みやすく

井上清吉商店(宇都宮市白沢町)の「純米大吟醸 澤姫」は16回目の金賞に選ばれた。原料米は栃木県産の夢ささらで、精米歩合は40%。
特にこだわったポイントは香り。「料理と一緒に楽しめる酒」というコンセプトを徹底し、通常より香りを抑えた。これまでは、リンゴのような華やかな香りがする「カプロン酸エチル」を酵母に加えていたが、今回はメロンのような爽やかさが特徴の「酢酸イソアミル」に代えた。
滑らかでやさしい甘さのある味わい、そして後味は軽く仕上がった。
佐藤全杜氏は「香りを抑えて評価されるのか、不安もあった。チャレンジだった」と振り返る。井上裕史社長(50)は「すべて栃木県産の原材料で作ったお酒で、全国の舞台で金賞をとることができて誇らしい」と胸を張った。
「開華」(第一酒造、佐野市)無形遺産で例年以上にうれしい

金賞は4年連続。2024年12月に日本の伝統的酒造りが国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産登録されたことを踏まえ、島田嘉紀社長は「多くの方が日本酒に興味を持っていただいている時だけに、今年は例年以上にうれしい」と喜ぶ。
日本酒コンテストは国内外に多数あるが、全国新酒鑑評会は800以上の蔵が出品し、しかも1蔵1点しか出せない。「この金賞は別格」と受け止める。
金賞酒は兵庫県産特A地区の山田錦を38%まで磨いて造った大吟醸。米が堅くて溶けにくく、その対応に苦労したが、「まろやかなうま味、香りもバランスの取れたものになった」。
佐野市は「出流原弁天池湧水」が「名水百選」に選ばれるなど良質な水に恵まれる。「この環境をしっかりと生かした酒造りをこれからも続けていきたい」と強調した。