「キングオブコント2024」で5位になった実力派お笑いコンビ「シティホテル3号室」が、初の単独ライブ「ジワニモマケズ ダサニモマケズ」を6月6、7日に渋谷・ユーロライブで開催する。チケットは即日完売し、アーカイブ配信が決定。結成12年目で初となる単独への意気込みや所属事務所「タイタン」の仲間への思いなどを聞いた。
【シティホテル3号室】2012年結成。国立大学出身の亮太(1985年生まれ、北海道出身)と塾講師歴10数年の押田(85年生まれ、神奈川県出身)によるインテリコンビ。「キングオブコント2024」で5位になり、2025年第7回「ビートたけし杯」で優勝した。
(1)とにかく不人気で有名
▼記者 初めての単独ライブを開催する理由と意気込みを教えてください。2カ月に1回のタイタンライブで毎回高いレベルの新ネタをかけ続けていることや、お二人の芸歴から考えると「初単独」に意外な印象があります。
●亮太 周りからはずっと「単独をやれ」って言われてたんですよ。僕らみたいなネタで勝負するタイプは、単独を積み重ねていった方がいいってことで。理由とかはないんですけど、だいぶ若手の頃に「キングオブコントの決勝に行ったらやりますよ」って高らかに宣言してたんです。その言葉に縛られて現在に至ったということですね。
▼記者 あんまり前向きではなかったという感じですか?
●亮太 もともと、いろんなライブでネタをやっていった方がいいという気持ちを持っていました。賞レース対策としても、外のライブの客層が違うところで試す方がいいかなと思って。今回は応援してくれる人の前で、自信のあるネタをまとめて見せたいっていう思いがありますね。
▼記者 「会場全部が自分たちの客」ということが、今までなかったっていうことですか?
●亮太 他の芸人を目当てで来たお客さんが「なんだこの芸人?と思って見たら、めちゃくちゃ面白かった」っていうのをずっとやりたいと思って、いろんな外のライブに出ていました。
▼記者 対バン相手のファンをかっさらうみたいな。
◆押田 かっさらうっていう言い方が…。一緒に応援してもらえればいいかなぐらいですね。
●亮太 何年か前だったら、そもそもお客さんを集められないだろうっていう問題がありましたね。5~7年くらい、芸人3組の合同で新ネタを下ろすライブをやってたんですけど、お客さんが毎回5人くらいだったんです。
◆押田 周りの芸人からも「シティホテル3号室はとにかくファンが少ない。人気が無い」ことで知られていました。それが今回の単独のチケットは、23時間で全部売れたんです。僕らにとってはかなり新鮮な出来事ですね。販売直前までは売れ残ることも前提に、手売りするしかないみたいな会話もしていたので。
▼記者 見どころは?
●亮太 コントは8本の予定です。初見の人にも見てもらいたいので、ここ1年ぐらいのアリネタも何本か入れると思いますけど、新ネタがメインです。僕たちが面白いと思っていることって、ネタ1本だけ見ても完全に伝わらないかなと思うんですけど、8本見たら全部分かると思います。シンプルに面白いネタを連打します。
▼記者 そこで手応え十分だったネタを、今年のキングオブコントの勝負ネタに?
●亮太 可能性はありますね。ただ勝負ネタと言うけれど、賞レースには、どのネタがハマるか分からないところもあります。あの場所で勝つためにどうしたらいいのかは、よく分からない。でも自分たちがやっていることが、どんどん良くなってるっていう感じが続いていれば、どこかでピタッと来るタイミングがあるかなとは思います。
◆押田 ネタは完全に相方が作っているので、そちらに関しては僕からは特に…。ただ、グッズがちょっといい感じになりそうだぞっていうのは伝えたいですね。「ファンがいない」とか悩んでた時にはとても言えないですよ、グッズの話なんて。
(2)キングオブコント効果
▼記者 キングオブコントの決勝に出て、仕事や生活にどのような変化がありましたか?
◆押田 まだまだ芸能人って感じではないんですけど、たまにテレビに出させてもらうとか、今までなかったようないろんな仕事が来るようになりましたね。
●亮太 今週は何かあるな、来週はこの仕事…みたいな状況が、キングオブコントが終わってからギリギリ今まで続いている感じです。初めて仕事で地元(北海道)に呼んでもらうこともありました。
▼記者 ご家族の反応は?
◆押田 僕はそもそも両親に芸人をやってることを言ってなくて。キングオブコント決勝に行く前に父親がたまたまテレビに出ている僕を発見して、父親には親バレしました。両親は離婚してるんで、母親はまだ知らないんですよ。
●亮太 お母さん、悲しまない?
◆押田 悲しむというより「何で私に言ってくれなかった」って怒ると思う。父親の方が先に知っちゃってるから、ますます言えない状況になってます。行けるところまで行くしかない。
●亮太 僕は結婚したのが、たまたまキングオブコント決勝の前のタイミングだったんです。仕事が増えたのは、本当に助かります。今年2月にはビートたけし杯で優勝して、さらに相手方のご両親に信用してもらうことができたと思います。
▼記者 たけしさんからアドバイスはありましたか?
●亮太 舞台上で、器用だから諦めずいろんなことに挑戦した方がいいよって言っていただきました。舞台裏でも、こなれないように、緊張感を持ち続けることを大事にしなさいと。こなれてるやつっていうのは、お客さんが見たらすぐ分かる。そうすると、離れていってしまうよっていうようなことを言っていただきましたね。
▼記者 押田さんは中学受験塾で長年国語の講師を務めてきました。コンビで出演する「語彙動画」も人気です。キングオブコントの活躍について、塾の生徒の反応はどうでしたか?
◆押田 塾の生徒の反応が、一番良いかもしれないです。最近はあまり行けてないんですけど、この前行ったら、サインの列ができたんですよ。1人で2回ぐらい並んでる子もいて「おまえ、2回目じゃないか」「まあいいよ、書いてやるよ」みたいにちやほやされて、めっちゃ楽しかったです。
(3)タイタンライブ、メンバーへの思い
▼記者 2カ月に一度のタイタンライブでは「爆笑問題」さんをはじめとする出演者が新ネタを出し続けています。若手にとっては大変かもしれませんが、その分、力になっているのではないでしょうか?
●亮太 もちろんですよ。2カ月に1回のタイタンライブでウケることが最終目標みたいな気持ちで、ネタを作ってます。(爆笑問題を目当てに来る客が中心の)ここでウケたら自信になりますし、どこに行ってもウケるのかなと思います。
▼記者 「ウエストランド」「キュウ」「春とヒコーキ」「ネコニスズ」の赤ちゃんなど、ここ数年でタイタンに勢いが出ているように思います。ライバル心や仲間意識などについても教えていただけないでしょうか?
●亮太 ウエストランドさんがM―1で優勝した時は、これで自分たちが優勝したら漫才、コントの両方でタイタンアツいな!とこっそり考えてました。ここ数年の先輩、後輩の活躍は、タイタンの若手が分厚くなってこれもまたアツいなという気持ちです。ライバルというよりは一緒に仕事をできる可能性が上がってうれしいですし、少数精鋭感をもっとにじみ出していきたいと思ってます。
◆押田 ネコニスズさんは事務所に入ったタイミングも僕らと近く、2組でユーチューブやイベントなどをやっていた仲なので、活躍は素直にうれしいです。春とヒコーキは、タイタンの所属組の中でコントをやっているのが僕らと2組だけなので仲間意識があります。去年のキングオブコントは、2組とも準決勝に進んでいたので「タイタンは漫才だけじゃないぞ」というところを示せたら良いなと思っていました。ただ彼らはユーチューブで売れまくっているので「いったん、コントは俺たちに任せてくれ」という気持ちもあります。
※単独ライブ「ジワニモマケズ ダサニモマケズ」の配信チケットは2500円で、視聴期間は6月9日~16日。サブスクリプションサービス「タイタンの配信」内で販売している。
(取材・構成・撮影=共同通信 近藤誠)