「ウィキッド ふたりの魔女」(c)Universal Studios. All Rights Reserved.全国公開中、配給元:東宝東和

 Blu―ray発売中、発売元「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会、販売元:株式会社ライツキューブ、(c)2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会

 「テルマ&ルイーズ 4Kレストア版」Blu―ray6380円(税込)、発売・販売元 KADOKAWA

 「ウィキッド ふたりの魔女」(c)Universal Studios. All Rights Reserved.全国公開中、配給元:東宝東和

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 「ウィキッド ふたりの魔女」(c)Universal Studios. All Rights Reserved.全国公開中、配給元:東宝東和  Blu―ray発売中、発売元「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会、販売元:株式会社ライツキューブ、(c)2024「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」製作委員会  「テルマ&ルイーズ 4Kレストア版」Blu―ray6380円(税込)、発売・販売元 KADOKAWA  「ウィキッド ふたりの魔女」(c)Universal Studios. All Rights Reserved.全国公開中、配給元:東宝東和  「ウィキッド ふたりの魔女」(c)Universal Studios. All Rights Reserved.全国公開中、配給元:東宝東和

 王子さまと結婚してめでたしめでたしとはならない「アナと雪の女王」の影響か、あるいはセクハラや性暴力の被害者が連帯する「#MeToo運動」以降の流れか、強い絆で結ばれた女性たちが共闘する映画が増えている気がする。いわゆる「シスターフッド映画」である。

 米テレビ局で起きたセクハラ事件に立ち向かう「スキャンダル」、家父長制が根強い社会に生きる孤独な女性たちを描いた「モロッコ、彼女たちの朝」など、国も作風もさまざま。そんな中、個人的にすっかりはまってしまったのが異色の青春アクション映画「ベイビーわるきゅーれ」(阪元裕吾監督)シリーズだ。

 殺し屋協会から仕事を請け負うプロの殺し屋コンビ、ちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)が主人公。邦画では珍しいキレキレのバトルアクションが見どころだが、ソファで2人だらだらくつろぐ日常的緩さとの落差が最大の魅力だ。

 シリーズ第3弾「ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ」で2人は宮崎に出張。過去最強の敵(池松壮亮)と壮絶な戦いを繰り広げるが、ちさとはまひろの誕生日プレゼントを用意していないことが気がかりだった。

 何でもそつなくこなすちさとと、コミュニケーション不全のまひろ。見た目も性格も異なる2人だが、修羅場を重ねるにつれ互いになくてはならない存在に。朝ドラのヒロインに決まった高石とスタントをなりわいとする伊澤が、絶妙なコンビネーションで見せる「銃とケーキ」の物語だ。

 シスターフッド映画の源流をたどろうと「テルマ&ルイーズ」を見直す。リドリー・スコット監督、1991年公開のロードムービーだ。

 ウエートレスのルイーズ(スーザン・サランドン)と専業主婦のテルマ(ジーナ・デイビス)は週末のドライブ旅行に出かける。立ち寄ったバーでテルマが男にレイプされそうになり、ルイーズが男を射殺。さらに犯罪を重ねざるを得ない状況に追い込まれ、2人はメキシコを目指して逃避行を続ける。

 最初は高圧的な夫におびえていたテルマは、引き返せない深みにはまっていくうちにたくましくなっていく。道行きを引っ張ってきたルイーズとの関係性も深化。束縛から解放されて自由になり、オープンカーで風に髪をなびかせながら「こんなに目覚めてる気分は初めて」と言うテルマの表情がいい。

 妻を支配したり、下品な言葉を投げかけたり、優しいふりをして金を奪ったりと、出てくる男たちはほとんどがろくでもない。テルマとルイーズが闘っているのはマッチョな男社会そのものだ。爽快な映画だが、男性中心主義にあらがうことが容易ではないことを感じさせもする。公開から34年がたつが、2人が走った荒野は今も砂煙が舞っているのではないかと考える。

 ともに手を取って闘ってきた女性たちの物語が、より現代性を増してバージョンアップしていると感じたのが「ウィキッド ふたりの魔女」(ジョン・M・チュウ監督)だった。米国の古典ともいえる「オズの魔法使い」の前日譚であり、人気ミュージカルの映画化だ。今作は2部作の前編に当たる。

 緑色の肌のため周りから奇異の目で見られてきたエルファバ(シンシア・エリボ)と、ちやほやされることが当たり前のお嬢さまグリンダ(アリアナ・グランデ)は、大学の寮で同室になる。正反対の生い立ち同士、はじめは反発し合うが、やがて厚い友情で結ばれることになる。

 2人が仲良くなるきっかけとなったのがナイトクラブでのダンスシーン。風変わりな格好で笑いものになっていたエルファバが涙をこらえて独り踊り始めたとき、グリンダも冷たい視線を浴びることを覚悟の上で一緒に踊り始める。親友になるのが唐突だと見る向きもあるが、言葉ではなく踊りで心を通わせる、ミュージカルならではの名場面だ。

 魔法の才能を認められオズの国に招かれたエルファバは、人間と共生していた動物を排除しようとするオズの魔法使いの陰謀を知る。そして“悪い魔女”エルファバと“善い魔女”グリンダの運命が動き始める。

 「オズの魔法使い」の話があまりにも有名である上に、この映画の冒頭でも結末が説明されているので、観客には2人が別々の道を歩むことが分かっている。ただ特筆すべきなのは、彼女たちが互いに信頼し合いながら、相手が自分とは違う決断をすることを認め、尊重していることだろう。自分の大切な人にとって大切なことは何かを考える。それが、自立と多様性の時代のシスターフッドなのかもしれない。

 差別や抑圧にあらがって闘う女性たち。自由を求めて、彼女たちは飛翔する。(加藤義久・共同通信記者)

 かとう・よしひさ 文化部で映画や文芸の担当をしました。「ウィキッド ふたりの魔女」のクライマックスは圧巻の一言。映画ならではのダイナミズムに酔いしれます。